メイカイ【2】
少しグレードアップしたその
このひとと生きたい。死ぬときまで一緒にいたい。
いや、それでは不十分だ。このひととは死んでからも離れたくない。離れるものか。
死後も彼とともに在るために出来そうな
そのためには、やはり結婚という形式をとったほうが手っ取り早いのではないか。
そうして、大人になった少女の夢は、『愛するひとと結婚し、同じ墓に入ること』になった。
言葉にしたら泡沫のように消えてなくなりそうなその夢は、気休め程度のおまじないのように、誰にも言わず、ひとり胸に秘めている予定だった。
何を思ったか、私はそれをある日のデートの途中で洗いざらい打ち明けてしまった。
それを聞いた彼は「約束」と微笑み、立てた小指を差し出して――……
「覚えてるさ。俺だって同じ気持ちだからね。君と違う場所に眠るなんて考えただけでゾッとするよ。とても耐えられそうにない。ああ、でも……生きてるうちに叶えられなくて、本当にごめん」
あのとき、どうして彼に話す気になったのか。なにかきっかけがあったはずだが、思い出せそうにない。
だが、曝け出した幼い願いが時を越え、彼が彼であるという証明となってくれた今は、それも些細なことかもしれない。
「いえ、謝らないでください。なるほど、約束ってそういう……確かに、してくれましたね。……ちょっと理解が追いつかないんですけど、信じるしかないみたいです。あの夢は他の誰にも話したことはありませんし、あなたがそれを誰かに話すこともまずないでしょうし。ね、ルトさん?」
「またそのあだ名で呼んでくれるんだね。ありがとう、アキノ」
零れ出た愛しい名前に目を細める彼も、ようやく私を名前で呼ぶ。耳をくすぐるその響きが心地好い。
「ルトさんこそ。やっと私の名前言ってくれましたね」
「気付いちゃってたか。ごめんね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます