第7話 ギフテッド

赤ん坊の母親、美由紀という女性にその疑問をぶつけるとつくり笑顔で、赤ん坊を抱きかかえた。

「そうですねえ……」

美由紀は考え込んだ。

「うちのお婆ちゃんなんて、百五十歳ぐらいまで生きたんですよね。でもその頃の記憶って全然ないらしいんですけど……」

美由紀は自分の祖母のことを思い出しながら話し始めた。

「私が生まれてすぐに亡くなったんでよく知らないんだけど、お爺ちゃんの話だとすごい長生きだったみたいで……私なんかじゃ想像できないほど大変だったろうなあと思います」

そしてしばらく黙り込んでから再び口を開いた。


「あの子は小さい頃から人よりちょっと体が弱かったんですけど、それでもいつも楽しそうな子でしたよ。

幼稚園の頃かな?友達と追いかけっこして遊んでいる時、転んじゃったことがあるんです。


その時私はちょうどそこを通りかかって、『大丈夫?』って聞いたらその子は泣いてたんだけど、『うん!平気だよ!』って言って立ち上がって走り出したんですよね。


それでまた転んだんだけど、今度はさっきよりもひどくて、もう起き上がれなくてそのままうずくまって動けなくなってました。


その時先生たちが来ていろいろ話しかけたり手を貸してくれたりしたんですけど、やっぱり駄目でしたねえ……。

結局救急車に乗って病院に行ったんですけど、そこで助かるかどうかは五分五分でした」そこまで話すと美由紀はふうっとため息をついた。

「ところがですよ!」

突然明るい声で叫ぶ。

「その二日後に急に退院してきたんですよね。『明日手術だって言われた』とか言いながら、普通に立って歩いて帰って来たんです。びっくりしましたよー!」


それがどうやら自分の母親らしいということに気づいているのかいないのか、赤ん坊は相変わらず無表情のままだ。

「ただその後少し体調崩しちゃいましたけどね。それから時々具合が悪くなって寝込むこともあるんですけど、そういう時は決まって次の日には元気になってるんです。


そんなことを繰り返してるうちにどんどん丈夫になっていったみたいです」

それを聞いてもまだ釈然としない様子の女神だったが、赤ん坊のほうを見てみるとあることに思い当たったようだ。

「もしかするとあなたには生まれつき不思議な力があったのかもしれませんね」

女神の言葉に反応したわけでもないが、赤ん坊は不意に手を伸ばし母親の手をぎゅっと握った。

「あら、今日はずいぶん甘えん坊さんね?」

美由紀は嬉しそうに笑いながら、しっかりと赤ん坊の手を握ってやった。

「あなたのお父さんもお母さんも、とてもいい人だったのでしょうね」

「ええ、もちろん」

女神は「それは贈物ギフテッドですよ!」と言った。



「えっ、どうなってるんです?」と僕は言った。

「さっき、この人の体に入ってみたのよ」と女神が言った。

女神の言うには「人間の体は魂が入る器としては脆すぎる」という。

なので人間の体に魂を入れる時は肉体に合うような形の魂を創造する。

「魂は肉体に依存するけど人間の持つ魔力を使って魂は補強されて、肉体はその魔力によって生長していくというわけ」

そこで相談員に目配せした。相談員は自分の席に座り直すと咳払いをして説明を始める。

「魂という物質はある。ただし目には見えないし触れられないんだ。それは空気と同じように我々の周囲を満たしている」

「じゃあどうやって私たちはそれに触れてるの?。

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