第6話 この子に生きて欲しかった
やがて母は、自分の子供がまるで石像になったかのような錯覚を覚え始めた。だがその赤ん坊は何も答えず、その目はうつろである。魂のない人間は、こんなにも不気味なものだったのか。
だが母親は、子供に語りかけずにはいられなかった。
何しろ自分一人ではこの子が生きているのかどうかさえわからなかったのだ。だが何も返事をしなくともその赤ん坊は息をしていたし、その呼吸にあわせて心臓も鼓動を続けていたのだから。
とにかくこの子に生きて欲しかった。そのためには何でもすると決意し、子供を抱きしめて泣いた。
しかし泣き声は部屋の中で虚しく響くばかりで、母親が何か言葉を口にしたところではっと気づいたように辺りを見回すが、部屋のどこからも返答はなかった。
やはり子供の魂はないのではないかと思う。
親子三世代転生などするのではなかった。
駄女神は茫然自失した。
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