第13話 第2領域攻略戦
あの後、俺達はゆっくり王都へと帰り、ミカエル国王陛下に借りている王宮の一室でともに泥のように眠った。俺もあのオークナイト500の軍勢はショックが強かった。
で、今日になり、朝7時くらいにアリアの弟に冒険話を聞かせてみたら、大好評だった為、今度冒険したら教えてくれとミカエル国王陛下に言われたのだが、今日は冒険者活動を休みにしようと思う。なにせオークナイト500の大軍を見た後だからな。十分な休養を取らせてくれ。
俺はつい、アリアと初めて出会った庭へ向かってしまう。庭では、いつものようにアリアが剣を持ち、素振りをしていた。初めて会った時よりも更に数段うまくなっている素振りに、俺は思わず見惚れてしまい、夕暮れ、俺達を探しに来たギルダーさんでさえも暫く見惚れていた。
少しの休養を挟み、身体的にも精神的にも回復してきた。明日から第2領域の攻略に入るので、夕食後のこの時間帯にアリアと打ち合わせをしている。
「あのオークナイト軍団をどうにかしないとな……。そこまで多く倒せなかったから、対多戦闘に有利な技、なんかあったか……」
「対多だったら王龍剣術【王龍牙・絶】でいいんじゃないですか?」
「あれな、魔力もかなり消費するんだよ。王龍剣術で最も魔力を消費すると言われている【極彩色の王龍】すらも軽く凌ぐ消費だからな……」
「そこまでなのですか⁉ 確かに多用は出来ませんね。【王龍咆哮】が最適なのでしょうか」
王龍剣術の特徴は、行動を繰り返せば繰り返すほど、威力が上がっていくことだ。スキルレベルが上昇するような感覚だ。王龍剣術スキルでもあるのだろうか。
という訳で、明日の朝からいつもの庭で王龍剣術【王龍咆哮】の練習をすることにして、いつものようにアリアと眠った。
この世界に来てから、何度目かの朝が来た。春はあけぼのと言うだけあって、春の青い空は澄み渡り、俺に朝日を浴びせてくる。
オークナイト軍団と戦ってから3日目だからか、精神的疲労は既に0だ。肉体も、レベルアップの影響により丈夫になっている為、引き篭もりゲーマーをやっていた頃なら筋肉痛で動けないだったろうが、もう大抵治っている。
今日1日は鍛錬に費やす事に成っている。アリアはもう起きていなくなっていたので、俺も着替えている途中だ。待たせるのも悪いからと特技の早着替えでアリアの元へ向かう。
「悪い、待たせたか?」
「いえ、大丈夫です。全然待っていませんよ。私が来てから2時間程度です」
最初の2文を聞いて安心するが、最後の1文を聞いて戦慄する。……アリアが俺に好意を抱いていたというのは勘違いで、実は嫌っていたのでは? とすら思える内容だ。
兎も角、その間もずっと鍛錬していたらしいアリアに追い付く為、王龍剣術【王龍咆哮】の型をなぞる。こういっては何だが、異世界勇者の特殊能力で成長がとても速いというものがある。つまり、俺が今から頑張ればアリアを超えられるのだ。
時折アリアとイチャイチャいながら1日鍛錬をし終わり、アリアが俺に好意を抱いているというのは勘違いではないと確認できたから俺は湯浴みをしてベッドに潜る。そして、昔からすぐ眠れる体質である俺は意識を微睡みに落とした――。
――翌日、装備を整えた俺とアリアとライムは、『オークの洞穴』という、この前の洞窟に向かった。あそこ、オークの洞穴と言うらしい。
ばっさばっさと道中の魔物達を斬り殺していき――やはりいい気分はしない――、『オークの洞穴』に辿り着く。
中に入ると先日と変わらぬ湿気が俺達を襲う。このせいで動きが鈍くなったのではと思う程の湿気は、慣れていくにつれて苦ではなくなったが、その時にはオークが徐々に湧いてくると知っている俺達は素直に喜べなかった。
「主様、オークなのじゃ!」
「に、しても。ライムの探知能力とんでもないよな」
「ですよね、かなり助かっています。人化は負担が大きいようですが大丈夫でしょうか……?」
スライムなのにこれほど強いとは。魔物はより強い物の気配に敏感だと言うし、そんなものなのだろうか。の割にはオークより絶対強者である俺達にオークが群がってくるのだが。
寄ってくるオークの左胸を一突きし、またも来るオークたちを殺しながら進む。これから5分ほどでオークソルジャーが出てくるようになるはずだ。
俺達は進んでいく。オークソルジャー、オークナイトを倒しながら更に進んでいく。そして、ハイオークがいた空洞まで辿り着く。
「人間がまた来たブヒね。やってしまうブヒ!」
「また配下頼りか。本人の戦闘力はないのかな」
「そうじゃの、主様には及ばないくらいじゃのう!」
「そうなんですね。いくら強い魔物でも、やはり勇者には勝てないんですか」
今度襲ってきたオークナイトは100に届かない程度、ゴブリン・オーク軍団を合わせてやっと500というところか。ゴブリン・オーク軍団を【王龍咆哮】で斬ると、体の各所を斬られた魔物達は戦意を喪失して逃げていった。
次に俺達は目前に迫っていたオークナイトたちの方へ向き、1体ずつ斬っていく。【極彩色の王龍】を使えば1撃で斬るなど容易く、アリアは【極彩色の王龍】は使えないが【金色の王龍】で斬っていく。そして、一瞬の間にオークナイトたちを斬り伏せ、ハイオークへと向かって剣を振る。撃ち放つのはここ一番まで溜めていた【王龍牙・絶】だ。
金色の王龍を纏い、その熱で触れた個体と液体を気体状態変化させながらハイオークへと迫る【王龍牙・絶】。それを迎え撃つはハイオークの使う、風魔術。
ハイオークの判断は正しい。【王龍牙・絶】に対抗可能な魔術は、風か火だけだ。土は個体、水は液体なのでたちまち状態変化してしまう。しかし、威力が足りない。ハイオークの魔術が止めたのは、【王龍牙・絶】のいわば『絶』の部分であり、元々の【王龍牙】の威力は打ち消されていない。
俺の剣が、ハイオークの首を貫き、吹き飛ばした――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます