第12話 洞窟攻防戦
アラナンド神国の国教、アラナンド教は実は世界を統べるアラナンド神国の前身、ステイシア王国の国王、ワルド・ステイシアの犠牲を以って生み出された可能性が分かったのだが。どうやらワルド王は死んでいないらしい。
「アラナンド神は、ワルド=ステイシア=アラナンドの名をワルド王に正式に与え、神の名を騙っていたことを赦しました」
「アラナンド神って、とっても器が大きい神なのか。続きを頼む」
「ワルド=ステイシア=アラナンドの名をアラナンド神から受け取ったワルド王は、まずアラナンド教を開くべく、アラナンド神から神託を賜りました」
「それでアラナンド神はわざわざワルド王に神託を与えたのか」
やはりアラナンド神は器が大きい。この話、本当はアラナンド神の器の大きさを知らしめる為の誇張話ではないのだろうか。ワルド王の姓はステイシアだったらしいので、恐らく史実だろうが。
「はい、アラナンド神はワルド王に、『アラナンド教』という宗教を開き、ステイシア王国の国教とすべし、という神託を与え、ワルド王はそれを受けてアラナンド教を開き、ステイシア王国の国教とし、ステイシア王国をアラナンド神国と改めましたとさ。というのがアラナンド教成立の歴史です」
「なるほど、勉強になったけど学ぶ意味が全く分からないな」
俺がため息をつきながら正直な感想を漏らすと、アリアは苦笑を漏らしながら俺に答えた。
「一応、一般常識なので……」
「まあ、興味深かったよ。で、もう進めるか?」
「恐らく大丈夫かと」
「次も疲れたらすぐに言えよ。戦闘中でもな」
オークナイトを無造作に斬りながらどんどん進んでいくが、ここまで順調に続いているのは格下の魔物だからオークナイトを斬れる為なのであって、俺の今のレベルは50以上、ポケ〇ンなら軽くチャンピオンになっていてもおかしくないようなレベルである。つまり魔王を倒していてもおかしくないレベルと言う事だが――それ程のレベルでオークナイトがギリギリ格下。
やはりこの世界の魔物は強すぎる。魔王なんて想像がつかない。そんなに強いのに何故魔王軍が世界を掌握できていないのか……何とか結界がある神都は別だとしても、帝国とかなら滅ぼされていておかしくない筈だろう。あるいは、世界征服の野望がないとか。
何度か軽く休憩を挟みながらも、3時間程度で洞窟の最深部と思われる場所に到達していた。そこにいるは丸々と太った豚と人のハーフのような、【因果と勝利の勇者】勝界人がハイオークと名付けた魔物。身長は2メートル程あるだろう、かなり高い。
……で、その身長が高く、強そうなハイオークがなんか玉座みたいな椅子に座っているのだが。洞窟に何故玉座がある。土の上に椅子を置くな。
「やっと来たブヒか、侵入者どもめ。やってしまうブヒ!」
「「え」」
ハイオークが命令すると、多数のオークナイト部隊が。その数、最低500。ここまで豚が並ぶと、軽いトラウマ程度ではなく、結構重度なトラウマになりそうだ。
「「「ブヒーッツ!」」」
「王龍剣術【極彩色の王龍】」
「お、おおお、王龍剣術ぅ! 【王龍玉】‼‼」
意味の分からないことを考えている合間も、敵たちは止まってくれる筈がなく。オークナイトたちは既に俺とアリアの目の前に来ていた。
とぐろを巻いたような極彩色の王龍を剣に纏わせ、やってくるオークたちを躱しながら斬り倒していく俺と、円を描くようにして斬り、近寄らせないアリア。アリアは少しパニックになっているが、俺達ってかなり強いんだな。
オークナイト部隊が無双状態で蹴散らされていくことに危機感を抱いたのか、ハイオークは更に、オークナイトだけでなくオークソルジャーやオーク、果てはゴブリンまでも追加してきた。
彼らは単体ではそこまで強くはないが、これだけ集まると勝てない。オークの上位種が何故ゴブリンを服従させているかは別として、かなり不味い状況だ。
「やばい……」
「逃げましょう! 逃げましょう!」
正直、アリアが提案している通りこの状況では逃げるのが最適解になるだろう。だって、勇者と言えども能力を発揮するのは生きている間だけ、死んだら何も意味がないから。まあ勇者って大抵こういう時になにか覚醒したりするのだが、命をチップにして試すのは抵抗感が強い。
俺は全力で凝縮させたお世辞にも多いとは言えない魔力を剣に纏わせる。聖剣だけあって魔力が通りやすい。そして、オークナイトの一匹に刃を食いこませた瞬間に剣に纏わせた魔力を解放し、衝撃波を起こすと、俺はアリアを掴み、自分で起こした衝撃波の反動で大きく後ろに下がる。
「アリア、走って先に帰ってくれ。俺はこいつらを足止めしながら行くから。大丈夫、死なないさ」
「分かりました! 絶対に生き残ってください! じゃああいつらにあててから逃げますよ、王龍剣術【王龍咆哮】!」
アリアが、敵を衝撃波で蹴散らす技、王龍剣術【王龍咆哮】によってもう一度敵を散らしてから走り始めた。俺はその後を追いながら、オーク軍団を散らしていく。
暫く逃げ続け、オークたちが見えない程遠くまで離れてから、俺はダッシュだけに切り替え、洞窟を出てから俺とアリアは生き残ったことをやっと自覚して、笑いあったのだった。
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