玖 興じる談話と愛情と犠牲
半妖は眺める
人の奮起とすり替えを
ある国での事
1人の男がいた
役者として高みを目指し
日々努力を積み重ねる
磨かれた演技は素晴らしく
見る者を圧倒した
その一方、
生まれ持った色気と
豊富な経験からの話術で
人の心を掴むことに
非常に長けていた
彼は思いつく
自らの話術を用いて
一つの娯楽を作ろうと
そして小屋を開いた
最初は世間話程度での接客
話し小屋と看板を出し
物珍しさでくる客相手に
話術と演技で迎え入れた
自らの演技を披露し
話術で客を喜ばせ
少しずつ繁盛した
しかし人とは
進化を求める生き物
独自性を求め
模索するうちに
話術は次第に
過激さを増していく
人の欲を駆り立て
奮起させる
一体感を
興奮を呼ぶ話術を
客から聞いた話を
他の客に話し
仕立てる様になる
取り
名誉であるかのように
不可解な空気が
小屋を包んでいた
私は客の一人として
数回立ち寄った
いつもの私であれば
適当な話をして
反応を眺める所
最初はそうしていた
回数を重ねる内
警戒心を解いてしまう
そうして立ち寄った時
先の件により
弱っていたのだろうか
何を思ったか私は
身の上話をした
何故に話したのだろう
この男の特徴なのか
自分でも不思議な程
口が動き、涙を
この男は私に同情し
頷き、
大変だったなと
言葉をかけた
そうして同日
披露する談話劇にて
私を指さしながら
笑いを誘うように
半妖の話をした
それがあたかも
勲章を与えるかの様に
愛情を伝えるかの様に
特別であるかの様に
私は凍りついた
外に出て鼠に変化し
遠くへ走り出した
あの男は
何を言っている?
そして悟った
ああ、人とは
己の
他人を犠牲にする
そんな生き物だ
そしてそれを
誇らしげにし
好意の裏返しと
すり替える
なんと
素直で
愚かで
盲目的
またも悟った
私にも半分は
同じ人の血が
流れているのだ
醜い姿の様に
そうだ
忘れていた
私は人の世を眺め
己を見定める
その為の変化の力
人に使う為ではない
眺めよう
それだけだ
次へ行こう
次の世を眺めよう
この世界には
既に用はない
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