閑話 魔族とドラゴンの会話4
「あの魔物は、バグシャス様の眷属なのですか?」
「まさか!ただの旅の非常食用さ。孵化させるのに多少の魔力とエサを与えてやっただけだ。触手の魔物があそこまで進化、あるいは先祖返りかな?するまでこの短期間で何世代の交配を繰り返したのか知らないが。ずいぶんと立派に育ったものだ」
「群生態なのに一匹の巨大な蛇のような形態を取ろうとするのは、もともとワームと言う種のドラゴンの血を引いているからなんだ。どうにかして本能的に先祖返りをしようとしているらしい。蛇神にささげられた生贄の人間が、無理に魔術で子を生そうとした結果、アレが生まれたんだ。源種の能力の影も形もないが、アレも一応人と竜の愛の子とも言えなくもないね。一応、テンタクルワームズって名前があるが、知性がなく本能だけで生きているから、駄竜とか堕龍とかの蔑称で呼ばれることもあるね」
「……アレが町を襲うことはあるのでしょうか?」
「無いよ。言っただろう本能だけで生きているって。この町の土地にはグレンガの魔素が多く残留しているからね。多くの魔物同様、彼の存在を畏れて近づくことないよ」
「人の血の味を覚えてしまったから、今度からは人間を好んで襲うようになるよ。街道を通る行商人たちには、お守りにグレンガの魔鉱石でも持たせるといい。アレ?今晩の君は随分と不機嫌そうだね」
「そのようなことはございません」
「君の町で諍いを起こす人間たちは居なくなった。君の悩みは一つ解決だ!感謝の言葉をくれていいんだよ」
「………」
「冗談だよ。人間上がりの君は、今でも人間の命を大切にしているんだね」
「意地の悪い人」
「私を討伐しに来る身の程知らずの相手は、アレで何とかなるよ。私の魔力で孵化させたから、世代を重ねても魔素の属性が変わらず同じまま保ち続けるよう品種改良されたものなんだ。緊急時の非常食だから、食べた時に使用者の魔力を回復させる効果を高めるためにね」
「今晩の殿下はとても饒舌でいらっしゃいますね」
「自慢話を聞いてくれる人が君しかいないからね。お礼に一つ助言をあげよう。
あのトパーズに瞳の魔術師、パトリック・シャスツールを大切にするといい。君の夢を実現させる大切なピースだ。彼の進める研究次第で100年から1000年の時短が出来るよ」
「まさかそんな」
「人間って凄いよね。彼らの築く文明はいつも我々を驚かせてくれる。素晴らしい技術を発明してくれる。素敵な文化を営んで楽しませてくれる!そんな彼らが世界をどんな方向へ導くか、神様じゃなくても楽しみに見守りたくなるよね」
「あなたは、人間の肩を持つのですか?」
「私たちから見れば君たちも人間の一種だよ」
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