閑話 魔族とドラゴンの会話2
「バグシャス様は異種間交配についてどう思いますか?」
「異種間交配?」
「ええ、今日町にグリフォンが持ち込まれてちょっとした騒ぎになったのです。ご存じですか?グリフォンは牝馬を襲い孕ませることが出来ます。肉食でまったくと言っていい程、生態の違う魔獣が、草食動物に仔を生ませる。興味深くはありませんこと?」
「ヒポグリフのことか。そう言われてみれば確かにね。でもグリフォンは合成獣だから例外的な事例だよ。ぶっちゃけ普通に異常性癖だからね、君ら」
「意地の悪いことをおっしゃらないでくだしまし」
「まぁ、魔物は本来の生物としての寿命を遥かに超えているから、年を取ってノーマルな行為がマンネリ化して、色々試して異常性癖を拗らせるのはよくある事例だ。番が変態的な快楽を追い求めて、情愛中毒に陥るのなんていうのは珍しくない。使わないでいると機能が衰えていくとは言え、退化しすぎて無くなることは無いからな雄雌関係なくね」
「そうした魔物の中に、あの方や貴方がいるのですね」
「アレは長らく同族と交わらなかった上、随分と人間と親しくしていたからね。けれど私をアレと一緒にするなよ。少なくとも私はドラゴンの姿のまま、人間に欲情してまぐわう変態ではない」
「それは失礼いたしました」
「ところで君はグレンガと子を生したいのかい?さすがに人間とドラゴンでは交配関係は無いことは知っているだろう。それは魔族化した君でも同じことだよ、道理を捻じ曲げる真似は止めておきなさい」
「ですがドラゴンの血を引く勇者の伝説もありますが、その真偽は」
「それは本当の話だよ。あちらにもそういう混血の児はいる。けどそれらはあくまで人間でしかない。片親がドラゴンだったとしても、生まれて来た人間は人間だ。多少親のドラゴンの魔力の波長や属性が反映されるが、それは人間でしかない」
「交配関係がないのに、どうやってドラゴンが人との間に子を生すのですか?」
「ドラゴンが変化の魔法で人に化ければいい。人だけではなく、馬に化ければ馬と、獅子に化ければ獅子と。変化の魔法は化けた生き物になれる。同種の生き物なら当然子もなせる。そなら何の問題もない」
「神話の神々には、関係を拒む際に変化の魔法で別の動物になってやり過ごす事があったそうだ。まぁ、相手も同じ動物に化けて無理矢理子作りに励んだ畜生もいたが」
「同胞のドラゴンたちにも、道理を曲げて異種族と子を生す異常性愛に狂った忌むべき者たちがいたよ。外法の魔術に手を出し、新たな生命の創造に挑み、交配関係の無い者同士で生み出したモノは、見るも悍ましい魔物として生を受けることになった。それでも結果的には、有用な生物だったから、駆逐されずに今も種が現存しているが」
「それがどんな魔物か訊いても?」
「触手の魔物。実はあれ自身には繁殖能力は無いが、他種族の体内に侵入して新陳代謝に係わる細胞分裂を利用して、宿主のオドに合わせた変異した自身の複製をつくって繁殖する。ウイルスの様な、と言っても分からないか。まぁ、そうした特異な生態のため短期間で大量に繁殖して直ぐに成長する。だからこそ食糧難の時に良質なタンパク源となって大変助かる。まぁ、見た目はゲテモノだが品種改良も容易で適応能力も高い。優秀な食料生産種だ」
「召し上がるのですか?アレを」
「ああ、食えるよ。確か人間の国でも魔物食の文化はある。職種の魔物は出自も生態もある意味、異種間交配の代表例な生物だな。魔族の中にはプレイの一環として、意中の相手に苗床にして、生まれた触手の魔物を食べるなんてまるで理解不能な……。
思い出したら気持ち悪くなってきた」
「だからまぁ、悪いことは言わないから止めておきなさい。君とグレンガの関係を聞いた時は驚いたが、子孫を残すばかりが愛のカタチではないだろう。それでももし君が彼との子が欲しいと言うなら協力できないことはないけど」
「何なりとお申し付けください、殿下」
「えっ!?マジ」
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