第58話
さて、アーサーに言われて服装を替えたのだが、アーサーが何故かじっと見つめている。何か変な所があるのかしら?
「アーサー、この格好変ですか」
「いや、別の事を考えてただけだよ。アイラ、良く似合ってる」
私はふと思い出したのでアーサーに聞いてみる。
「アーサー、最近の学院はどうですか。クラスの方々は元気にしていらっしゃるかしら」
「ああ。クラスのみんなはアイラの事とても心配していたよ」
「アイラ、次はどんな研究を始めるのか考えているのかい」
「まだ考えていないですが、魔物討伐の遠征に向かう時に役立ちそうな物を作れたらとは思っています」
「やっぱりアイラは僕の奥さんだね。素敵過ぎて心臓が止まりそうだよ」
「アーサーは今日は学院へ行かなくても良いのですか」
「うん。今日はアイラが出勤してるって聞いて学院へ行く前に寄ってみたんだ。そしたらアイラが蠱惑的で困ってしまったよ。もう今日は一日アイラと一緒に居る事にするよ」
意味が分からないわ。
アーサーを他所に後に居たグレイが焦り出す。
「殿下、まだ生徒会の仕事も残っております。リチャードも生徒会室での打ち合わせで待っておりますので、そろそろ学院へ向かって下さい」
やはり仕事は詰まっているのね。
「アーサー、グレイが困っていますわ。私、また研究を始めるので、その間は毎日出勤していますわ。いつでも来てくださいね」
不満そうなアーサーを引きずるようにグレイ達は学院へ向かっていった。さて、次は何の研究をするかな。
父に魔物討伐の話を聞きに行くか。あと、騎士団へも顔出しをしないとね。協力は不可欠だもの。
黒軍服に着替え魔法塔へ出向いてみたが、生憎父は会議に王宮へ出ていて不在。兄は忙しそうにしている。
「ノア副官様。忙しくしているようなのでまた次回にしますわ。ついでに騎士団へ挨拶に行ってきますわ」
兄はこの間の魔法珠の件を担当しているそうな。同じような魔法・魔道具の研究なら部署を一緒にしても良さげなんだけど、別になってるのはアーサーが権力に物を言わせたに違いない。絶対そうだ。
兄は寂しそうに送り出してくれた。騎士団は貴族、平民問わずの人気職であり、団長ともなるとかなりの腕前になる。
勿論、指揮官としても優秀らしく、令嬢達からの日々熱い声援を受けているらしい。
アーサーの剣の腕前は幼少期から前騎士団長達の師事で上達していてとても強いらしい。けれど、前回の件で父や兄にズダボロにされているので実は父も兄も剣技は騎士団長クラスなのかも。恐ろしい。
私はというとやはり剣技はからきしで学院でも最低限は習ったという程度。才能は開花しなかったわ。魔法も実力を隠し続けているので周りは研究以外は駄目な奴というイメージなのかもね。
騎士団棟へ着くと受付に声をかける。
「魔法騎士団所属、アイラ・スペンサー。本日、騎士団の見学及び騎士団長に挨拶にしにきました」
「騎士総長及び団長達は現在会議に出ていますが、騎士団棟を見学している間に戻ると思いますので、見学後に騎士団長の部屋へ案内します」
そう言うと受付の騎士は騎士団の訓練場へ案内してくれた。
訓練場は令嬢達の見学場でもあるらしい。沢山の令嬢達が見える。ここは大切な婚活の場ではないだろうか。ふと、何名かの騎士と目が合う。訓練を止めてこちらに向かってきた。
「アイラ様。騎士団練習場へ来て下さったのですね!無礼を承知の上で申し上げます。数年ぶりに手合わせをお願いしたいです」
えー。
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