第59話

 キラキラした目で見つめてくるよ。避暑地に行った時にいた兵士達か。そういえば騎士団の人だったね。そりゃそうだね。


「あの時の方々でしたのね。私はただの研究員ですので弱くて相手になりませんわ」


 この場で有名になりたくないしね。しかしながら問屋は下ろしてくれない様子。取り囲まれました。ウルウルと目を潤ませ、強請る姿は可哀想なワンコに見える。私、おねだりに弱いんだよね。


「仕方ないですわ。後にも先にもこの1度だけですわよ?」


そう言って訓練場の真ん中へ行く。騎士達は前回の方達以外にも参加していて、どうやら副官様が取り仕切ってくれている模様。1対30って前回より多いわ。


「酷いですわ。か弱い乙女に30人もの騎士が相手だなんて」


よよよと泣いた振りをしてみるけれど、あまり効果はないらしい。仕方がないわ。気持ちを切り替えて自分に結界を付ける。副官の始めの合図と共に前回と同じ手を使う。


今回は人数も居るので小指サイズの火の玉数千個だして追尾させる。


「ふふっ。皆様、乙女をイジメるからこうなるのですわ」


 騎士達は小さな火球になす術なく、ボロボロになっている。のんびりしていると頭上から殺気が。すぐに手のひらサイズの結界を10個ほど起動させる。上から切り掛かってきた騎士を結界で捕まえると副官から勝負有り!との声がかかる。


「流石テオの秘蔵っ子だな。俺が捕まっちまうなんて大した研究員だ。お前らは後で鍛え直しだ。副官、後は頼んだぞ。お前はこっちだ」


 そう言われて騎士の後を付いていくと入った部屋は騎士団長室。あ、師団長様でしたか。部屋に入ると、そこには6人の師団長と総長が居た。


「お初にお目にかかります。魔法騎士団研究員、アイラ・スペンサーです。本日、正式着任の為、騎士団への見学と団長様方へ挨拶に来ました」


「さっきの騎士達との手合わせは面白かった。会議が終わって帰ってきたら訓練場が騒がしくて見せてもらった。あいつら最近、弛んでたからちょうど良い訓練になったわ。俺は第一騎士団長ローガン・イネスだ。隣が第二のセオ・モリス。その隣が…」


 第一師団長はみんなを紹介してくれたが、一気には覚えれなさそう。


「スペンサー研究員、君の活躍は耳にしているよ。騎士団員にも役立つ物をどんどん開発していってくれ」


総長、なんだか格好いい。父とは違うイケオジだわ。


「ところでスペンサー研究員。魔物との実戦はあるのかい」


「我が領地で研究の為に森へ入り、素材の為に侍女と小さな魔獣を狩る事はしておりました。私の戦闘力としては父や兄に劣り、力を発揮できるのは専ら研究のみであります」


「ほう。将来が楽しみだな。そうそう、まだ不確定な情報だが、アーサー殿下を陥れようとする輩がいて水面下で動いているようだ。念のためお前も気をつけるように」


「ありがとうございます」


「なぁに手合わせの礼だ」


 礼をして部屋を出る。あまり良くない情報ね。すぐに取り掛かるか。すぐに陛下に連絡し、許可をもらう。殿下が狙われているなら防ぐための物を作らないとね。



そうなるとやっぱりあれに行き着く訳ですよ。

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