第57話 アーサーside

 隣国から来たエスメ・グリフィス王女は最悪だったな。あんな気持ち悪い奴が僕のアイラに掴みかかるなんて。アイラの目も腕も全部僕が消毒したい位だ。


アイラとの甘い時間を奪ったからその場で切り捨てても良かったんだけどな。せっかくアイラが気に入ってる庭園を汚したくないし、アイラにこれ以上汚物を見せるのも嫌だし。

自分でもよく我慢できたと思う。


 それにしても馬車でのアイラは綺麗だったな。庭園でもっと抱きしめていたいと思ってだけど、馬車で手を繋いで寄り添うのも興奮したよ。どこぞの騎士達が甘い雰囲気に御令嬢達は気分も乗せられると言っていたが、本当に雰囲気って大事なんだと思ったね。


 アイラの唇が僕の唇にそっと触れた瞬間、雷に打たれた気分だった。初めてのキス。夢だったのかな。ああ、今思い出しただけでもニヤニヤが止まらない。


 馬車から降りた時も不意に頬にしてくれた時の感動。忘れたくないな。幸せ過ぎてどうやって自室に帰ったか覚えてない。


グレイからは奇異な目で見られたがどうだっていい。あぁ、可愛いアイラを人目に晒したくないよ。舞踏会もお茶会も最低限でいい。虫を近寄らせたくないからね。




 アイラは魔法騎士団への引っ越ししてきた。本来なら僕の邸で僕だけを見ていて欲しいのに如何せん彼女は優秀過ぎた。


なんとか魔法師団に持っていかれる事を防いだけど、魔法騎士団の研究者として働く事になってしまった。あぁ、でも邸でも職場も一緒なら僕も安心だし、ずっと一緒だ。


 おっと、影からの報告でアイラが久々に出勤してきたようだ。数日ぶりのアイラだ。ノックしてそのまま開けるのはマナー違反だが、早る心が抑えられず入ってしまった。


… … …夢でも見ているのか。すぐさま扉を閉めて鍵をかける。グレイなんかに見せてたまるものか。


目の前にいるアイラが足を出しているのも興奮するが、あの服装はなんだ。俺は誘惑されているのか。


 天使が女神になった時の神々しさにも劣らず、僕から俺に変えてしまうほどの今までに感じた事のない劣情。サキュバスにも勝る蠱惑的で官能的なしぐさ。言葉が出てこない。


 俺のデザインした服をアイラがあそこまで魅力を引き立てているなんて信じられない。あぁ、俺の妻で良かった。早く同じ邸に住んでアイラの魅力に溺れたい。


と、ともかく、このままグレイを中に入れるのはダメだ。せめて足を隠さねば。


「アイラ、アイラが着るものはなんでも似合うよ。でもね、目のやり場に困るよ。僕以外の誰にも見せたくないからズボンに着替えてね」


優しく諭したが、あれは凶器だ。俺はしっかり目に焼き付けた。ズボンに履き替えてもアイラの魅力は衰えないが、先程よりはグレイに見せても大丈夫だ。それより劣情よ。鎮まれ。集中だ。



あぁ、早く二人だけで過ごしたいなぁ。

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