第56話

「そうだ、アーサー。少しだけ手伝って欲しいんだけどいいかな」


「アイラのお願い事ならなんでも聞くよ」


 先程、目玉ちゃんから頂いた魔法珠に針を刺し、また刻んで魔力吸わせるようにした物をアーサーに2個渡す。


「アーサー。これを腕に刺して欲しいのです。私も2個作るので一緒にお願いします」


そう言ってアーサーに2個同時に刺す。


「あぁぁ。アイラに魔力が吸われていく。アイラの過激な愛を感じるよー」


何か激しく違う気がする。先程より少し小さめの魔力珠が出来た。そして私も同じ大きさの2個作る。


「アイラ、これをどうする気だい?」


「私の想像ですが、これで簡易結界が張れるんじゃないかと予想してます」


 1つを手に取って刻んでいた術式を削ると針からほんの少しずつ魔力が出ている。ここに私の結界魔法をかける。イメージ的にはろうそくに火を灯す感じよね。今回の使い方は。


ポワンと小さな結界が目玉の周りに作られた。どうやら成功ね。これをもう一つに付けるとまた小さな結界が出来る。


糸のような細さにした鋼を魔法珠4個で四角くなるように括り付けてみると、どうでしょう。鋼の範囲に結界が。


「アーサー、成功したわ。凄くない?凄いよね!?」


一発成功なんてちょっと感動。


「アイラ、凄いよ!世紀の大発明だよ」


「騎士様達の野宿はこれで安全よね。とりあえず魔法騎士団の塔入り口にも設置してみようかしら。悪意を持った人が入れないようにも出来ますわね」


 あとはどれくらい保つかだよね。私が居ないと結界張れないのか、普通の魔法珠に込めた結界魔法をぶつけて出来るかもやってみないとね。


 魔樹育成が、最優先事項になってしまったわね。父に魔法で言葉を乗せて飛ばす。


『早急ニコラレタシ』


少ししてから父と兄がやってきた。


「アイラどうした。何かあったのか」


「お父様、これを見て下さい。あれからアーサー殿下に魔力を頂いて作ってみたのです。」


結界を見せるとかなり驚いている。


「もし、これが実用レベルになるのであれば魔樹の育成が急務になるかと思いますわ」


「アイラ、これは凄い発明だよ。本当に魔樹育成が急務になるね。部下達に早急に取り掛かる事を指示しておくよ」


「と、いう事でお父様。私今日の引っ越しと研究の成果を出したと思いますので邸に一足先に帰りますわ。数日は邸から出ません。アーサー殿下、ではまた後日」


 早く帰ってゴロゴロしたいのよ。ウエルカム!気ままな研究者暮らし。すぐさま馬車で邸に帰ってリリーに全てを丸投げし、私はベッドでゴロゴロ中。


 夜遅くに帰ってきた父と兄はどれくらいの時間結界が使えるのか、とか、魔力珠の様々なデータを取ったりだとか。大変忙しく過ごしていたようだ。


私もやれって?安全性は第三者に評価してもらった方がいいのだよ。多分。



私は数日のーんびり過ごしたのでやる気十分。


いざ、出勤。




 研究室に入ってからは黒シャツと黒タイトスカートと白衣に着替えて眼鏡でばっちり。出来る女の完成。


淑女は足を見せてはいけないようなのでこっそり研究室だけね。研究室ではこの間の成果をとりあえず報告書にまとめておく。


ー コンコン ー


「アイラ、今日は出勤してるって聞いてきた。学院も休…」


アーサーは言葉が紡げず、すぐさま扉を締める。扉の外からグレイの声が部屋に入れてくださいと聞こえてくる。


「アーサーどうしたの?」


「アイラ、なんていうか、その服装はどうしたんだい?」


「あら、早々にばれてしまいましたね。どうですかこの格好。出来る女風で良くありませんか。」


「アイラ、アイラが着るものはなんでも似合うよ。でもね、目のやり場に困るよ。僕以外の誰にも見せたくないからズボンに着替えてね」


チッ。仕方ない。私は奥の私室に入って黒ズボンに履き替える。


「アイラ、その格好も良く似合ってるよ」


私が着替えをしている間にグレイは中に入れて貰ったらしい。

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