第55話
魔法塔の父の部屋まで行くと兄もちょうど父に書類を出しに来たらしい。
「筆頭。入室許可を」
「入れ」
兄と一緒に父の部屋へと入ると父は驚きながらもニコニコの笑顔で迎えてくれた。
「アイラ。どうしたんだい?」
「お父様、魔法珠の実験は進んでいますか?これを見て貰いたくて隣の塔からきましたわ」
手のひらサイズの目玉(魔法珠)に針が刺さった物を見せる。
「魔法師団はとりあえず今は魔樹育成の為の調査をしたり、他の魔獣対策が主な仕事だから魔法珠研究はそこまでは進んでいないかな。なんだいその大きな魔法珠は」
「魔法珠に私の魔力を吸わせてみたのです。強制的に魔力を奪うような術式を描いて。結果はご覧の通り成功したのです。思い付いたのですが、毎年魔力過多症で亡くなる子ども達に使えるかなと思うのですが、どうでしょうか」
針を抜いてみる。針程度なら多少の修復力はあるのかも。皮にはならなかった。何回もは刺せないだろうけどね。詳しく実験を後でしてみるか。
「お兄様、この魔力珠を使いたいので外でお兄様は大きな魔法を打ち込んで魔力消費をさてきて貰っても良いですか?」
兄、全速力で走って行ったわ。魔法塔の窓から火柱が見える。兄すげー。そして走って帰ってきた。
「お兄様、いいですか。私の純粋な魔力なので何か有ればすぐ医務室へ行って下さいね」
兄がうなずく。兄に向かって投げてると珠はパンっと弾けるように割れてしまった。やはり針で刺すと繰り返し使うのは難しいのね。珠から出た魔力は兄の中に吸収されたように見える。同時に兄がキラキラ輝き始めた。
「お兄様、どうですか」
「アイラー。凄いよ。さっき消化した分の魔力は戻ってるね。余分な魔力は体に取り込めないみたいだね。魔力満タンですこぶる調子が良いよ」
魔力ポーションみたいな扱いだね。
「お父様、もう少し魔力珠を使ってみたいのでそこの目ん玉ちゃんから貰っていっても良いですか」
「あぁ、構わないよ。アイラは色々思い付いて凄いね。流石我が娘だ」
父の部屋で日向ぼっこしていた魔樹に魔力を注いであげると心なしか魔樹が喜んでいるように見える。葉からぽこぽこと目玉を落としてくれた。グロ可愛いやつめ。
6個程落としてくれたので浄化をかけて部屋に戻り研究を続ける。ここでは目玉が奇声をあげても魔物は来ないから安心よね。
今更だが、魔法塔や魔法騎士団塔は隣同士にある建物で塔と言っても細長い塔ではないのよ。何故か塔と呼ばれてる。
高い建物ではあるんだけれどね。1階には団員全員が入る事の出来る広さがあり、2階は私の研究室や会議室、勿論3階以降の階の一番上は見張り台として使用されているが、アーサー達の執務室、リチャードやグレイの部屋等、沢山の部屋がある。魔法塔も同じだが。
騎士団や近衛騎士団は王宮別棟と呼ばれてる。人数多いから詰所とも言われてるみたい。そんな事はさておき、引っ越ししたばかりなのに何故かアーサーが来てるのですが。
「アーサー、学院はどうしたの」
「アイラの記念すべき引っ越しの日に来なくてどうするんだい。それに学院での今日の用事は既に終わらせたし、問題ないよ」
研究室にアーサーの従者がお茶セットを持って入ってきた。どうやらアーサーはここでお茶を飲む気のようだ。
「あぁ、アイラとこうして毎日会えるのはいいね」
「毎日ですか。アーサーは学院の寮に住んでいるから難しくないの?」
「魔法騎士団の事もあるし、アイラもここに居るから寮は引き払ってきたんだ。明日からは王宮からの通いになるよ」
「本格的な魔法騎士団始動まで後少し。団員達も選りすぐりの精鋭揃いだと聞いてるし、楽しみですね」
「僕はアイラとの結婚が楽しみで仕方ないよ。でも、今日からこうしてアイラと一緒に過ごせるのはいいね」
「私も楽しみですわ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます