第44話

 領地に帰って数日。あれからアーサーは毎日花束を持って邸を訪れる。


セバスにお願いして会わないようにしているんだけどね。こう毎日だと困る。


 今日は森に素材探しに行ってみようかな。セバスに話をしてリリーについてきてもらう。一人でも大丈夫なんだけど、リリーも強いしね。


きのこや木の実、魔獣を採取しつつ、私達は森の中を歩き回る。


 今日はなんと!魔樹なるものを見つけたよ。大興奮。木に目みたいな物がギョロギョロ付いてる。初めてみたよ。


特に襲ってくる訳じゃないので木に寄生しただけなのかな。そっと目の部分をナイフで取ってみる。弾力のあるガラス玉みたいな感じ。


何だか気持ち悪いから手に取った目玉に浄化を掛けると、『ギャーーーーー』と割れんばかりの大きな奇声を発して中の目玉は消えてったよ。残ったガラス玉みたいな物。何かにつかえるかも。


でもね、さっきの奇声、嫌な予感。


魔物がこっちに気付いて駆けてくる。この魔樹は呼び寄せるタイプか。


 何匹くるか分からないからとりあえず逃げる。リリーもひたすら走ってる。全力疾走で森を抜けたはいいけど、熊っぽい魔獣だけは付いてきたわ。ヤるか。


リリーの場所を確認し、振り返ってみると既に魔獣が氷漬けにされてる。あ、マズい。後退るがもう遅い。


「アイラ、危なかったね。でももう大丈夫だよ。会いたかった」


抱き絞め殺される勢い。リリーに引き剥がされなければ確実に逝ってたね。 


「殿下助けて下さってありがとうございます。ですが、大丈夫ですわ。私も国内有数の魔力持ちなのをお忘れですか」


殿下との試合にも勝っておりますわよ。


「そして何か私に御用ですか」


「アイラの一生に一度の初舞踏会を潰してしまった事を謝りたいんだ。もう一度僕とだけ踊って欲しい。そして今すぐにでも僕と結婚して欲しい」


「私を突き飛ばした彼女の方が姉さん女房で上手くやっていけるのではないでしょうか。残念ながら私を守ってくれる騎士様は現れませんでしたので、自分の身は自分で守る事を思い立ちましたの」


そういって歩き出そうとするが腕を離してくれない。


「アイラのデビュタントを邪魔した奴等はみんな牢屋に入ったよ。誓約書を書かせたし、もうアイラと僕の邪魔をする奴等は居ない」


あら。殿下ってそういう事するような人でしたっけ。


「とにかく、私、研究で忙しいのです。今日はお引き取り下さいませ」


そう言うとアーサーはさっと腕を離し、


「僕は10年。10年もアイラを見てきたんだ。アイラ意外には誰も愛する事は無い。また来るよ。今度は一緒にゆっくりお茶をしよう」


そう言い残し去ってった。え、10年。今年16だよね。5歳ってあのお茶会よね。そこ以外に接点なんてあったの?


記憶を辿るけど全く分からないわ。まあ、いいわ。今はこの目ん玉詳しく知りたい。


 家の図書室に魔物の本はあったんだけど、詳しくは載って無かったのよね。浄化した後は見た目は本当にガラス玉、硬質ゴムのような弾力。魔法で火を出して焼いても、水に浸けても特に変化無し。燃えない素材って凄いよね。でも、不燃物って環境に悪そうと思ってしまう前世庶民の私。試しにスーパーボールのようになるのかと投げてみても跳ねはしなかった。


中にあった目玉ってどこに行ったんだろう。そう考えながらふと魔力を目ん玉の中に入れてみたら、あら不思議。水色の玉になったわ。水属性だったかな、さっきの魔力。


緑の属性に切り替えて注いでみても、もう魔力は入らない。水(色の目ん)玉は振っても出てこないし、どうしよう。


壁に投げてみると衝撃のせいか水が出てきた。魔力を出したせいかまた透明なガラス玉に戻ってる。


今度は緑魔力を込めると緑の玉になったわ。壁にぶつけてみるとツタが絡んだ状態になった。


何コレ。面白いんじゃない?世紀の大発見しちゃったかも。

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