第39話

今年で私は16歳になる。16歳になる貴族令嬢は一般的に舞踏会デビューの年となる。今回のデビュタントはホリー事件を吹き飛ばすための目的もあって殿下との仲もアピールしなければいけないのだろう。


憂鬱だわ。


当日は早めに王宮からの侍女も私の手伝いに来てくれるそうな。そしてこの特別な日は領地から母も来てくれるみたい。




 リリーにのんびり起こしてもらおうと思ってたら悪魔達(王宮からの侍女)が早朝からやってきた。


否応無しにお風呂へ入れられて、時間を掛けたマッサージ、魔界(舞踏会準備)コースでもみくちゃにされてる私とは違い、リリーはのんびり見学中。


王宮のやり方を勉強しているのだとか。アーサーから送られてきたドレスはぴったりサイズだった。いつのまにチェックされてたのか謎だわ。


 私は年齢的にも今まで舞踏会の参加はなかったので、今回の衣装は白でよいそうな。


 アクセサリー一式はアーサーの瞳の色で統一されてる。王宮の悪魔達(侍女)はここぞとばかりに化粧を施し、綺麗な髪型にしてくれた。


今回、要望していた地味令嬢は却下されてしまいました。悪魔な侍女達は美少女だ、天使、女神だとみんな褒めてくれましたよ。


鏡をみて自分もびっくりの美少女がいた。リリーなんて泣き出す始末。王家の馬車が到着し、父と母、兄もホールでスタンバイ。


階段上の私を見つけると父も兄も固まってしまった。侍女に促されてようやく動きだす。


「本当にアイラなのかな。我が家の天使はいつのまにか女神になっていたんだね。あぁ、もう今日は出掛けずにみんなでお茶しよう。そうしよう」


そう言ってサロンへ行こうと兄がぎゅうぎゅう抱きしめてくる。父もサロンへ移動しようとしてリリーに止められる。母はまたかとうんざりしている様子。


「旦那様、若旦那様、いい加減になさいませんと舞踏会に遅れてしまいます。折角のお嬢様の晴れの舞台で御座います故、もう出発なさいませんと」


 今日はアーサーのエスコートはあるけど、会場までは両親と兄と一緒に行く事になっている。馬車で見る外の景色は違って見える。気がする。





初舞踏会。そして私のお披露目会でもあるのよ。緊張してきたわ。馬車が停車し、兄が先に降りるとそこは煌びやかに彩られた令嬢達が沢山集まっていて、とても華やいだ雰囲気を醸し出している。


私は兄に手を添えて馬車から降りると目の前にはアーサー殿下が居た。私の衣装に合わせたデザインの殿下はなんて格好いいんでしょう。周りの女の子達から黄色声援が。


やはり私の場違い感半端ないよねきっと。いくら美少女に仕立て上げて貰っても所詮焼き付け刃よ。


アーサーが見目麗し過ぎてもう既に帰りたい。なんとか帰りたい気持ちを抑え、エスコートを兄と交代し、会場に入って行く。みんなの視線が一斉に集まり、好奇の目にさらされてるわ。


 舞踏会の開始前なので主催の陛下に挨拶をする為にみんな並んでるわ。私達は別の扱いよね。舞踏会も陛下の挨拶と共に開始となる。私は陛下の挨拶後に呼ばれ、アーサーと共に移動する。


「アイラ・スペンサー公爵令嬢こちらに」


「アイラ・スペンサーです。アーサー殿下の婚約者であり、この度、初の舞踏会を持ちましてお見知り置きを下さりませ」


礼を取り一歩下がるとアーサーがエスコートしてくれる。


「アイラ・スペンサーは魔法剣の製作者でもあり、我が国一の研究者といっても良い。その令嬢が第二王子のアーサーの婚約者であり、何人たりとも二人の邪魔をせぬように。ワシからは以上である」



この間のウッドとの事があるからよね。挨拶後、音楽が流れる。

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