第38話

 リチャードにこれから寮に帰ってシフォンケーキを作ったら兄達に持って行く話をすると、リチャードも試食したいらしく、王宮まで一緒に行ってくれるらしい。


 寮に帰るとリチャードはサロンで待機。リリーにオーブンを温めて貰ってる間に魔法で生地作り。今回は紅茶シフォンにした。


後は型に流して焼く。本来なら一晩寝かせるんだけど、そこは魔法でばっちりよ。焼いてる間に生クリームを用意して早速リチャードと馬車に乗り込む。





 王宮に着くとまず、魔法塔へ向かう。魔法塔の横にある訓練場ではやはり兄にしごかれているアーサーとグレイがいたわ。


「お兄様、今日はその辺にしてお茶しませんか。私、お兄様の為にお茶菓子を作って来たのです。」


そう言うと、すぐに兄は父の部屋に案内してくれた。アーサー達を引きずって。ボロボロになったアーサー達をみたリチャードはドン引き状態だったわ。


可哀想なので私からアーサー達にヒールを唱えて回復。父はみんなを座らせ、お茶を用意してくれた。


 私はシフォンケーキと生クリームをお皿に盛り付けみんなに渡す。人数いるから小さくなったけど、男だし甘い物控えめで大丈夫だよね。


「今日、リチャードと魔道具屋の新作を見てきましたの。とっても感動しましたわ。私とリチャードだけ楽しむのも悪い気がしましたので商会に寄ってお菓子の材料を買って作って持ってきましたの」


初めて食べたであろう紅茶のシフォンケーキ。ふわふわの食感でみんな気に入ってくれた様子。良かった。秒で無くなったわ。意外とみんな甘い物は大丈夫だったようだ。


「お父様、今度の舞踏会の前日から邸に帰りますわ。当日はアーサー様が入り口からエスコートして下さるそうです」


「アイラ、今日は楽しかったのかい。リチャードと行かずに僕と行って欲しかったよ」


「アーサー様、私、今まで一度たりともアーサー様から手紙はもとより、お揃いのアクセサリーを頂いた事も街へ行こうと誘われた事もござませんわ。ウッド様とは腕を組みながら色々出かけて、買い物も沢山なさったようですが。


私のハンカチが無ければ今頃どうなっていたのやら。私、悲しんでおりますの。アーサー様が望むなら婚約解消も仕方ないですわ。ね、お兄様?」


「あぁ、天使が幸せなら何でもいいよ」


私の告白に周りは引いてる様子。グレイも流石に殿下を小突いてるわ。父は沈黙を守ってるようですが左眉が上がってますわ。だって本当の事なんだもん。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る