第37話

 今日はリリーに療養明けのイメージで髪型を準備して貰った。午前中に学院長や先生に挨拶してからクラスに入るとみんな心配してくれて本当に嬉しかった。


 休んでいた間のクラスの事、色々教えて貰ったよ。実技も終わり、今日はそろそろお暇しよう。


「アイラ、話があるんだ」


久々のアーサー。アーサーもグレイも少し窶れて見える。リチャードはいつも通りだけど。


 生徒会室に案内されて座ると従者の方がお茶をだしてくれた。私の横にはアーサーが座っている。


「アイラ、アイラの事、護れなくてごめんね。毎日アイラの事で気が気じゃなかったんだ。もう片時も離れたくない。今すぐ結婚しよう」


「私、療養中考えましたの。領地に帰って兄のお荷物として生きていくのも良いかと。アレクサンダー殿下からは婚約者交代でも良いのではと言われましたが、考え中です」


「駄目ダメ。絶対ダメ。アレクは確かに僕にも言ってきたが、僕は嫌だからね?今回の事で痛感したんだ。アイラを護る為にはもっと強くならないといけないと」


 そう言うと、アーサーはぎゅうぎゅうと抱きしめてくる。今までこんな事があっただろうか。


まるで兄の溺愛が移ってきてるのかと思ったんだけど。アーサーは私を抱きしめながら


「今年から始まる舞踏会は是非、僕のエスコートで参加してね。後でドレスやアクセサリーを贈るよ」


有無を言わさない感じ。アーサー殿下の求愛ポイントってずれてるような気もするんだよね。兄もそうだけど。


 ほら、女の子ってドレスや宝石が好きな子も一部いるけど、デートしてキャッキャしたいし、好きな人と同じ時間を共有したいんだと思うんだよ私は。一般的だよね?


常に抱っこやお膝ってラノベ的溺愛の表現ってやつなのかもしれないが欲しいのは今それじゃない。もしや、貴族一般の考え方と私の一般と違うのか。私が研究に明け暮れているせいで貴族一般とズレが生じているやもしれん。


「そうだわ、リチャード。今度魔道具屋に行きたいんだけど、一緒に行きましょう。最新式の魔道具が入ったらしいの」


「最新式かぁ、見てみたいね。明日にでも行ってみる?」


「明日ね。了解。楽しみ」


「アイラ、僕は誘ってくれないの」


「え、だって、アーサーとグレイ様はお兄様との訓練がありますよね?それにウッドさんと散々街に出かけて、お揃いの物も買っていたからいいですよね」


リチャードと私は魔道具の事で夢気分。アーサーとグレイはこれでもかってほど暗い表情。これくらい許されるわ。


 あいつのおかげで怪我まで負わされたし。殿下達はフォローも何にもなかったしね。


あ、リチャードは何故他の方より軽い処分かというと、アーサーの従者と思われてたためかやつと余り接触があまり無かったみたい。


そして、こまめに情報を纏めて上に報告していたらしい。グレイは護衛騎士兼毒味係なのと、騎士=格好いい、なのかアーサーの次に接触が多かったんだよね。


 二人とも私に怪我を負わせた罰と称して兄や父が特別に訓練しているらしい。


 寮に帰ってからはリリーに明日リチャードと街に出かける話をし、我が家の護衛か影を手配して貰った。翌日は朝からリチャードがサロンまで迎えに来てくれたので一緒に街に出かけた。ふふふ。


 これは人生初のデートではなかろうか。リチャードとは素材集めに街に出かけた事は何度もあるけどね。


 早速魔道具屋に入ると色々な品物が置いてあり、リチャードも私も大興奮。お店の中で熱く語ってしまったよ。店主も私達の熱さに絆されたのか、3人で魔道具談議が始まった。


今度リチャードの作った魔道具を見てくれると約束してたよ。楽しかったー。


 その後は人気の食堂でお薦めランチを食べてから商店にやってきた。粉や卵等の材料達と大きめの鉄板を買った。リチャードは何を作るのか興味深々。


そのまま馬車に乗り込んで帰宅。帰宅途中の馬車内では先程の鉄板をまた魔力コネコネでシフォンケーキの型を作った。


 リチャードは何を作るのか気になってるみたい。

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