第35話

 次の日からは私は変わらず実技のみクラスへ戻って参加。その後は研究室に籠って新しい物を開発すべく、色々構想に耽っている。


 この間アーサー達に渡したハンカチも実は画期的だったんだけどなぁ。装着者の属性を無視して使える魔導具よ?変換に結構な魔力ロスはあるみたいだけども。


何だかいい案が浮かばないわ。兄や父からは魅了の件が解決するまで領地に帰っててもいいし、兄達が寝泊まりしている王都内の邸に来ても良いって言われてるんだけど、今の所何もないので登校も続けてる感じ。


 お昼になり食堂へ向かうと、クラスのみんなはテラス席に着いてこっちよ!と手を振ってくれている。


私もランチを取り、向かおうとした瞬間、後ろから押されてランチを落としてしまった。


「アイラ様酷いですぅ。私とアーサーが親しくしているからって突き飛ばして意地悪しないで下さい。アーサーも見たよね?」


… … …。


なんて言えばよいのか分からないけど、絡まれてるよね絶対。(犯罪者)ウッドはアーサーにくっ付いた。いつからアーサーと呼び捨てにしているんだろう。


「ホリー、向こうへ移動しよう」


アーサー達はさっと(犯罪者)ウッドを連れて中庭の方へ移動するようだ。クラスメイトの方々は心配してくれているのがありがたい。食堂にいた人達に一言。


『皆様、お騒がせしてすみませんでしたわ』と謝っておきましたよ。やるせない。





 ここ数日の間にアーサーや取り巻き達と更に親密になって逆ハーレムを形成しつつある。


逆ハーはいいんだけど、何故か私に絡んでくるようになったんだよね。


実技授業の前後やお昼は必ず私の前に現れて何処に連れて行って貰っただとか、お揃いの物買っただとかの自慢から始まりアーサーに抱きついたり、私が虐めたと嘘吐いたり。


どんどん内容がエスカレートしてる。地味令嬢がアーサーの婚約者では納得がいかないのかもね。


それに加え、研究室や寮への少しの移動にも彼女の取り巻き達からも暴言を吐かれはじめ、廊下では突然押されたりして怪我をする日が増えてきた。


 理解していても、もう疲れてきたよ。そろそろ休んでもいいかも。そんな思いの中ついに、心折れる瞬間が来てしまったの。



 階段を降りようとしている時に取り巻き達に(犯罪者)ウッドを池に突き落とした罰だと言われ、私は階段から突き落とされた。


 一番上から落ちてしまい、頭を打ってしまったため気を失ってしまった。どうやらすぐに殿下の影に助けられ、すぐさま医務室へ連れて行って貰ったみたい。


 意識を取り戻してから医務室の先生に聞くと、どうやら頭を切ってしまったようで頭から大量出血、左足も違う方向へ向いていたようだ。


 制服は血塗れ、足には添え木がしてあり、すぐさま父と兄が迎えに来てくれた。私は医務室の先生や助けてくれた影、迎えに来てくれた父と兄にケガの具合を確認してもらうと自分自身で全力のヒールを唱えた。


完璧に怪我は治したわ。流した血の分は今回のヒールで増血しない事にした。増血するにはイメージや魔力、時間も大量に必要だから。


貧血でもいいから直ぐにでも家に帰りたかったんだ。


もう、いいよね。


頑張らなくても。





 父も兄もカンカン。私は父の王都内にある邸で療養する事になった。怪我人を領地まで移動させるのは酷だと医務室の先生に言われたからね。


 部屋に着くと貧血の為か、重なったストレスの為かパタリと寝落ち。そのまま熱を上げ1週間ほど高熱が続き寝込んでしまった。


 その間は面会謝絶となったけど、熱が下がってからは心配して来てくれた母やリリーに一杯甘えたよ。


リリーは毎日泣きながらお世話してくれた。兄に至っては仕事が終わると直ぐ邸に帰ってきてずっと寝るまで側で手を繋いで、朝晩の食事は何故か兄の介助。暑苦しい位、至れり尽せり。


私の血塗れ姿が相当ショックだったみたい。


流石に陛下も事態を重くみて王宮医師を派遣してくれた。うーん。貧血意外は元気なのだけどね。

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