第34話

 部屋の中へ案内し、3人を座らせ、私も席に着く。リリーは突然の訪問客にも驚かず、お茶を淹れてくれたわ。出来るメイドは違うわ!


「私の部屋まで来るのは初めてですわね。どうしたのですか」


「アイラ、僕はアイラの事が大好きで今すぐ結婚したいんだ」


「殿下、今日来た目的は違いますよね」


リチャードから突っ込まれてる。


「昨日の朝、ハンカチをアイラから貰ったよね。アイラの魔力を感じるし、飛び上がるほど嬉しかったんだ。でも眺めていると突然ハンカチが自分の魔力を吸い、勝手に魔力が使われハンカチが震えてる事に気づいたんだ。


ハンカチの術式が光っていたからすぐに解呪・解毒の術式だと分かったよ。アイラの愛を感じて居ても立っても居られなかったんだ。リチャードとグレイに確認したら彼らも同じだった。リチャードやグレイは僕ほど魔力は無いから解除に時間がかかったようだけど」


リチャードは気づいてから調べてくれたようで、解除されたのはおそらく魅了との事。


ただ、魅了自体は軽く、1回に受ける魅了は相手を好意的に捉える程度だが、数回と重ねていくうちに離れられない程の強力なものとなるらしい。


そしてより魅了が強く作用する為には相手に触れることが必要らしい。よく調べたよね。


 ウッドさんが来る度に観察していたんだって。そっか、ハンカチが役立って良かった。


 どうやらウッドさんが用意した料理にも惚れ薬が仕込まれていたようで、グレイが毒味した途端にハンカチに相当魔力を持っていかれたらしく、グレイが膝をつくほどだったらしい。


 グレイの具合が悪いと言って殿下達は早々に医務室へ駆け込んだようだ。ウッドさん、確信犯だったのね。


 魅了自体は無意識で使用してしまう人も中にはいる。そういう人は即牢屋行きにはならないけれど、故意に王族に向けての使用はアウト。惚れ薬も使用なんて絶対駄目に決まってる。念には念をって執念が怖いわ。


 医務室へ駆け込んでからはすぐに王宮に連絡し、父や兄が私の術式で解除した魅了の詳しい解析をし、医療官達はグレイの食べたサンドイッチを解析。


サンドイッチからはびっくりするが多量の媚薬と惚れ薬が検出されたらしい。ウッドさんは誰を襲うつもりだったのか。


 それにしても仕事が早いね医療官。アーサー達はその報告に来てくれたのか。


「アイラ、ここからが重要な話なんだけど、ホリー・ウッドが何処から惚れ薬や媚薬を手に入れたのか、王族への魅了の目的について子爵や他の貴族が関わっているのか調べるために泳がせる事になった。僕はずっとアイラと一緒に居たいのに陛下の命令でホリー・ウッドに付き合わなければならないんだ。信じて待っていて欲しい」


「待つかどうかは解りかねますわ。私は目の前で婚約者が異性の方と仲睦まじく戯れている様子を見るのは嫌ですもの。今の所は良いですが、いつ気が変わるやも知れません」


わかっていても私の目の前でイチャコラは辞めて欲しいね。女心は複雑だと自分でも思う。


はぁ、気が重いわ。


悄気るアーサーを横目にグレイもリチャードもフォローしてくれたけど、私は当分研究室に籠もれば見る事もないかな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る