第26話

 私はアーサー殿下に連れられて魔法塔と呼ばれる魔法師達の部署の魔法師筆頭部屋へ入る。父は突然の訪問にびっくりしたのか手から炎を出していた。


「アイラ~。パパの職場見学に来てくれたの?嬉しくて副官を昇天させちゃいそうだったよ」


「副官様の焼死体は見たくありませんわ、お父様。先程まで王妃様のお茶会に呼ばれていたのです。王妃様から我が家の化粧水が欲しいとの事だったのでお父様にこうしてお伺いをたてに来たのです」


作るのは父だしね。


「そうだったのか。そうだね。セバスを通して化粧水を届けさせるよ」


「さ、話も終わったし、アイラ嬢いくよ。まだ行きたい所があるんだ」


間髪入れずに、でしたね。このまま寮に帰る予定だったのに。アーサー殿下は手を取る。


「ではお父様、アーサー殿下のお散歩に付き合いましたらすぐ寮へと帰ります。毎日研究に明け暮れているのでまた邸には冬休みとなるとは思いますが、こまめにリリーから報告があると思うので心配せず仕事を続けて下さいね」


父はなんだか不服そう。当たり前よね。すぐ来てすぐ帰るんだもの。そこまでしてアーサー殿下の行きたい所はどこなのかしら。


 通された場所は殿下の部屋。ニコニコ笑顔の殿下。それにしても殿下の部屋はシンプル。すっきりしていて物が最低限しか無い感じ。


「ようやくアイラ嬢と2人になれたよ」


護衛のグレイや侍女は居ますがね。


「僕の部屋に人を入れるのはこれが初めてなんだよ。嬉しいな。アイラは僕の初めての人なんだね」


「ちょっと言葉がおかしくなってますわ。略さないで下さい。変な誤解が生まれます」


ふふふと笑う殿下。脳内に警告音が響いております。


「そうそう、忘れる前に。この間の魔法剣凄かったね。リカ兄が無理言って闘技会までに作らせて大変だったよね。僕から少しだけど、お礼だよ」


そう言うと侍女に持ってこさせた箱を開く。小さくシンプルだけど洗練されたデザインのネックレス。


「とても素敵ですね。良いのですか、頂いても?」


素直に嬉しい。殿下は早速私に着けてくれた。


「僕がデザインしたのだけれど、アイラ嬢が気に入ってくれたなら嬉しいよ」


なんと。


「殿下がデザインされたのですか。とっても素敵で気に入りました」


「僕はアイラ嬢を一目見た時から気になっていたんだ。それからは君を見かける度に追いかけるようになったんだ。完全なる一目惚れだよ。僕は第二王子だし、僕は学院を卒業後、アイラ嬢が作った魔法剣で初の魔法騎士団長になる予定なんだ。


父からも既に打診もされていてね。ゆくゆくは大公になり、領地でのんびり予定だし、アイラ嬢はこの先も研究を続けたいんだよね?僕はずっと研究を続けて貰っても構わないんだ。王妃教育もしなくていいんだよ。側に居てくれるだけで幸せなんだ。是非、僕のただ1人のお嫁さんになって欲しい」


え!?アーサー殿下が私に跪いてプロポーズしてる。急過ぎて頭が回らない。


まだ私12歳よ?前世記憶足したらアラフォーだけどね!殿下は将来イケメン確定だし、私も研究し続けたい、王妃教育したくない。


あれ、もしや丁度良い落ち着き先?でもさっき、王妃様言ってなかった?成果挙げてこいと。


「アーサー殿下、とても嬉しく思いますわ。ですが、王妃様の課題をこなさないと認められる事はないと思いますし、他の御令嬢様方も納得はしないでしょう。もし、成果を出す事が出来た方が正式な婚約者となりますわ」


今答えれる事はそれだけよね。アーサー殿下は複雑そうな顔だわ。侍女が空気を変えるべくお茶を持ってくる。


「アイラ嬢は次回のお茶会に何を成果にするか決めているのかな?」


「まだ決めていないですわ。色々やりたい事がありすぎて困っておりますの」


「ふっ、アイラなら問題なさそうだね。次の研究も楽しみにしているよ」



少しの間殿下と雑談をし、寮へと帰った。

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