第25話

 闘技会も終わり、平穏な日々を過ごしてるうちにリリーからお茶会の案内を受け取る。その手紙の印は王家の紋章。ぐぬぬ。


王家からのお茶会は強制参加なのね。母からの手紙も添えてある。


「アイラ、後はよろピクね!」


手紙にはそう一言だけ書かれてあった。えーっと、母はいつからこんなキャラになったのか。嫌な予感しかしない。


仕方がないのでリリーにお茶会用のドレスを手配してもらい、参加する事となった。



 

 お茶会当日はとても良い天気で王宮自慢の薔薇の庭園の中で始まった。呼ばれていたのは6人の妃候補達。リカルド殿下とアーサー殿下の妃候補達がお茶会に呼ばれたみたい。うえーん。怖いよー。


当日の装いはリリーと相談して地味令嬢が頑張りました風に仕上げて貰った。リリーはぶつぶつ文句を言ってたけど気にしない。


 妃候補令嬢達はお互い牽制し合っている様子。キャットファイトが見れそう。地味令嬢の私が案内された席は王妃様から一番遠く、私が案内された席の両隣も空いていたわ。


最初見た時、他の令嬢達から離されていて、いじめかと思ったわ。でも妃になりたい訳じゃないから除外されていてのんびり眺めてるんだけどね。


 もう既に帰りたいわ。王妃様がお茶会の始まりを告げると、令嬢達の学院の闘技会の話や噂話をやんわりしつつ、火花が散っていた。


自分こそが殿下に相応しいなんてはっきり言う令嬢も居たわ。自己肯定感MAXなんだろうか。感心するね。


私は会話に参加する事なく空気に徹する。ピリピリした空気の中、王妃様が口を開く。


「アイラ嬢は研究に没頭してばかりでずっとお茶会に不参加だったのよね。ようやく参加してくれて嬉しいわ。先日の闘技会の魔法剣は凄かったわ。陛下も魔法剣が欲しいと駄々を捏ねていたのよ。陛下や息子達ばかりはしゃぐのでずっと癪だったのよね。それにこの前、お茶会でオリヴィアから貰った化粧水。びっくりするほど良かったの。私も王子達と一緒にはしゃぎたいわ」


ぎゃー。ぶっ込んできた!令嬢達の視線が一気集まる。


「お褒め頂き有難う御座います。王妃様、あの化粧水の作成は父が関わっており、父の許可が必要となります故、父の許可が有ればいつでもお作りし、お持ちますわ」


「アイラ嬢は様々な研究で将来有望ね。そうだわ。良いことを思いついた。せっかくここに優秀な妃候補達がいるのだから次回のお茶会までに何でもいいので成果を1つ成してきなさい。次回のお茶会で報告とします」


王妃様は和かに手を1つ叩いて令嬢達に提案した。


「面白そうなお話をしていますね。母上」


現れたリカルド、アーサーの両殿下。私以外の候補者達の目の色が変わったわ。和かな笑顔を浮かべた2人は従者にイスを用意させ、私を挟んで両殿下は座りましたよ。


ぐぬぬ。解せぬ。空気と化した地味令嬢が一気に目立ってしまったじゃないか。令嬢達からの視線で射殺されそう。私は恐怖しか無い。殿下達、わざとだな。


私の両隣にいる悪魔に誰か!誰か!聖なる鉄槌を!心の叫びは虚しく誰にも届かない。そこに1人の令嬢が


「スペンサー様、少し厚かましくなくて?両隣に殿下が座るなんて」


誰だっけこの人。えーっとポピーさんだっけか。


「そう言われましても…。テイラー侯爵令嬢様とお席を交換致しますわ」


そう言って席を立とうとすると、アーサー殿下がさっと立ち上がり手を差し出す。


「母上。せっかくアイラ嬢が居るのです。今、私が魔法師筆頭殿の所へアイラ嬢を案内し、化粧水の話をしてきますよ。ではアイラ嬢行きますよ」


有無を言わさずガッチリ腰に手を回され逃げられないデスネ。視線に射殺させるよりましか。王妃様はふふふと満足そうに退出の許可を出す。


リカルド殿下も立ち上がると


「私では役不足かもしれないが」


と、令嬢達に執事の如くお茶を入れながら1人ひとり会話をしていた。妃候補達のピリピリした雰囲気も無くなった様子。流石王子。私はアーサー殿下に連れられさっとその場を後にした。

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