第23話

 夏休みも終わると学院は一気に魔法闘技会へ向けて色めき立っている。


 闘技会は各クラス上位3名の選手が選ばれ、1年生から6年生まで各学年毎に競う事になる。5、6年生は就職先へのアピールも兼ねているので負けられない戦いになるみたい。


 私は今回はAクラスの上位3名に入らなかった。上位3名はアーサー殿下と、護衛のグレイ、そしてラッセル子爵。


ラッセル子爵?え、誰って?彼の名はシルバー・ラッセル子爵。ややイケメン。大抵の事は卒なくこなせるバランスタイプの男の子。


柔らかな雰囲気を持って人当たりもいいので女の子からもよく声がかかっているようだ。興味がなかったので登場から名前が出てこなかったよ。ゴメンね。


 殿下やグレイは私が上位に入らなかった事を怪しんでる。戦闘は苦手だから仕方ないよねー。リチャードもまた様子見のようで戦闘には手を抜いて上位に入らなかったようだ。





 魔法闘技会当日。


 学院長の挨拶から始まる。ついにデモンストレーションの時がきた。私の研究員人生が華々しくスタートする予感!闘技場の中央には魔法剣を持つ兄とリカルド殿下。


人選は誰がしたんだろう。黄色い声援が凄い。人気投票かもしれないね。兄は炎を纏わせリカルド殿下は氷を纏わせる。


相反する攻撃で剣がぶつかると同時に小さな水蒸気爆発のような風がくる。お互い本気では無いけれど、魔法剣の打ち合いが楽しくて仕方ないようだ。


そしてキラキラオーラが凄い。兄と殿下がアイドルと化しているわ。闘技会に来ている両陛下や保護者、スカウトに来ている方々が注目しているのは間違いないね。


 デモンストレーションの後、すぐさま競技に移る。どうやら各学年の生徒会の方々は皆さん上位者のご様子。黄色い声援がそこかしこから聞こえてくる。


 私はというとリチャードと先程の魔法剣について熱く語り合っていた。私は魔法剣方面に研究を進めていこうかと思い始めていて、リチャードはまだ決めていないらしい。


さっきモーターの話をしたら興味を持ったようなので闘技会後にモーター試作品でも作って見せるかな。モーター談議に花を咲かせている間に1年生の決勝戦が始まろうとしていた。決勝戦に登場したのはアーサー殿下。


 アーサー殿下は無数の氷華を出し、相手の攻撃を華で相殺しながら攻撃に変えていく。氷華が次々と相手の選手に当たり氷漬けとなりあっさり勝利。黄色い声の嵐。


 勝利の合図で殿下は私と目が合ったような気がした。けれど、どうやら私の席の斜め前に別の婚約者候補のポピー・テイラー公爵令嬢が居たようだ。


見ていたのは私じゃないな。ポピー嬢はアーサー殿下に向けて手を振ってるし。


リカルド殿下も3年の部で優勝。生徒会の方々も軒並み優勝や準優勝している。兄も余裕で優勝しているようだ。



 さて、兄の優勝を見届けたし、急いで生徒会室に行かねばね。

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