第21話

 滞在最終日は騎士達からキラッキラの眼差しで対戦要望が相次いだ。えーと、私侯爵令嬢よね?か弱い女の子設定なはずよね?何故だ。


…仕方ない、私1人と集まった騎士、兵士達と対戦することにしたわ。私は指先に拳大のファイアボールを1つ作る。


「騎士の皆様。私、か弱いですのでこのファイアボールで騎士様方と戦いますわ。強い騎士様達ならファイアボールなんて軽く吹き飛ばしてしまい勝負にならないかも知れませんが、宜しくお願いします。」


騎士達は拍子抜けな顔をしているわ。ファイアボール1個を投げてお終いなんて思っているのかしら?


「準備は宜しくて?では攻撃を始めますね」


私は親指サイズの追尾型ファイアボールを千近く出して『お逝きなさい』と騎士達に向かって追尾させる。



逃げ回る騎士達。基本的にファイアボールは投げたら終わりの一直線で相手にぶつけるのが主流なのよね。たまにカーブを描いたりする物もあるけれど、滅多には使わないかな。初級魔法だからとあまり意識せずに使う魔法らしい。追尾型は見た事がないので今の所、私だけが使っているのかも知れないわ。


ふふっ。切る目標物が小さく難易度高めで訓練にはいいはず。いい気味だわ。


私は結界内でのんびり。騎士達の阿鼻叫喚が心地良いわ。兄達からはエゲツないって声が聞こえる気もするが無視。もちろん手合わせの後はちゃんとヒールをかけてあげましたよ。


優しい私に感謝して欲しい位よ?


 領地に帰る日は朝から侍女達が荷物の詰め込みに忙しそうにしていた。サロンで待つ私にアーサー殿下から一粒の真珠のネックレスを貰った。


「アーサー殿下有難う御座います。大事にします。これからも一臣下として研究に励み、アーサー殿下や婚約者になる方の支えになるような物を作っていきますね」


ここはしっかりお礼を言わないとね。兄が呼んでます。殿下達に挨拶をし、馬車に乗り込む。




領地に帰ってからはひたすらに研究に励んだ。おかげで魔法剣が出来上がりつつあるような気もする。


結局、鉄だけだと魔力フルパワーに耐えれなかったのよね。魔力を通す素材を練り込み、限界ギリギリの高硬度の鋼を鍛造して作った。鍛造する所がポイントよ?どうやらこの世界での普通の剣は鋳型に流し込むような物らしい。鍛造途中で硬すぎて私の心が何度も折れそうになったよ。


研ぎにも何度涙したことか。魔力に耐えれるように柄に隠れる部分は父に教えて貰った魔力との親和性が高くなるの術式と硬度維持の術式を刻んだ。刻む作業も難しくて日数を要したと思う。


限界まで硬くした鋼に風魔法で彫るのも一回に数ミリがいい所。間違えれないし硬いし本当に大変だったよ。


柄と鞘は流石に職人さんに作って貰った。鞘には剣の修復を促す術式を取り入れた。刃こぼれ程度なら徐々に修復されるはずなんだよね。



試作品が完成したので庭で試し切りをしようと思い、父と兄を呼んだ。と、いうか既にスタンバイしてた。セバスも母もいる。いつもながらに感心してしまうわ。


いつ完成するかとワクワクしていたらしい。


初めて切るのはやはり父にお願いした。間違っても魔法師筆頭なので爆発しても対処もしてくれるでしょう。


 父は火の魔法を唱えた。するとボッという音と共に剣に纏わせる事が出来た。どうやら魔力を剣に纏わせるため普段の魔力使用より少しのロスはあるものの、気にする事なく使えるらしい。それと、使用する魔力量により火の勢いは違うようだ。


父の全力の魔力だと炎が大きくなり過ぎてかなりの凶器になるみたいね。流石は筆頭。


父はセバスの用意してくれた木に斬りかかると予想した通りに焼き切れてくれた。切断面は火が燻っているわ。これは凄い。


他に雷や氷、風を纏わせて切ってみる。良い感じ。だけど、風魔法を使った時、丸太はゴロゴロと吹き飛ばされてしまった。どうやら切った後に相手を風圧で吹き飛ばすのが出来るようで父は風魔法で切る事が気に入ったみたい。


興奮して何度も切る姿は子どもだなって思ったよ。


 次に兄が剣を持つとイケメンキラキラオーラが凄かった。父もイケオジだけどね。妹で無ければ求婚をしていたかもしれない程のイケメン。中身は残念過ぎるけどね…。


兄も魔法剣に興奮して切り刻んでたわ。父も兄もこの剣が欲しいらしい。


「自分達で作れば良いと思いますわ」


って言ってみたけど、どうやら鋼を作る時に魔力で包んで捏ねる工程がそもそも難しいそうだ。出来なくは無いのね。


武器屋では扱えない位の硬度らしく、今のところ私だけが作れる素敵な仕様。儲けでウハウハできる日も遠くないかもしれない。


切れ味は世界に誇る日本刀を目指して鍛造と研磨したから魔力を通さなくても一流の切れ味のはず。これで秋の闘技会は大成功だよね。


という事で2本目も結構な時間をかけて作りました。


頑張りましたよー私。

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