第12話

 ようやく、待ちに待った学院入学となりました。ここに来るまで長かったような短かったような。


今年から私も寮に入る。寮は貴族専用と一般の寮と分かれていて貴族専用はさながら高級マンションのような感じ。サロンも完備されている。


寮には侍女も連れて来れるのだけど、基本は一人で何でも出来るようにと兄やリカルド殿下達は従者は付けて居ないみたい。リカルド殿下には護衛は居るけどね。


私も今朝はリリーにお願いして明日からはリリー無しの寮生活予定。前世で1人暮らしだったし、大丈夫。むしろ楽しみ。


 学院では目立ちたくないのでリリーにお願いして眼鏡に重い前髪、三つ編みの暗くて目立たない子風に仕上げて貰った。リリーは不満な様子だったけど。目立ちたく無いのよ。王子達にも目を付けられたくないもの。


 そうそう、お茶会以降、のらりくらりと避け続けていたのに王子妃候補から外れてないんだよね。リカルド殿下もアーサー殿下も婚約者がいないので近々決まるのかな。





入学式では新入生代表の挨拶はやはりアーサー殿下だった。前回見た時より更に格好よくなってるわ。アーサー殿下って本当に絵本から出てきたような王子様だわ。


 式も終わり、各自教室へ移動する。学院では成績順にAからFクラスまであり、大体の貴族はAかBにはなっているが、Aクラスは将来官僚を目指している人のクラスでもあるため、優秀な平民も結構いるようだ。


反対に貴族の女子は結婚の為の学院入学なのでBクラス以下でも然程は問題視されない。まぁ、王妃候補者は優秀に越した事はないけどね。


 私はというとAクラスでした。私含め女子は7人程。後の23人は男子でした。もちろんその中にアーサー殿下やリチャードは入ってた。



 クラスに入ると席に座るため場所を確認する。…名前順じゃないか。嫌な予感しか無いわ。私は席に着くとリチャードは早速話しかけてきた。


「スペンサー嬢、久しぶり。同じクラスだったんだね。宜しく。それにしても、雰囲気がガラリと変わったんだね」


「リチャード様、アイラと呼んで下さい。今更ですわ」


再会の挨拶もそこそこに後ろからの黄色い声で振り向く。アーサー殿下が令嬢達に囲まれていた。アーサー殿下は令嬢の波を掻き分け、やってきた。


「隣の席、いいかい?僕もアイラって呼んでいいかな。僕の事もアーサーと呼んで欲しいな」


やっぱりアイラ、アーサーって名前で隣の席だった!


「アーサー殿下。アイラとお呼び下さい。隣の彼はリチャードです」


リチャードは軽く会釈をする。


「これからよろしくね。婚約者候補殿」

後ろから令嬢達の視線が刺さる、刺さる。


「席につけー」


教壇に立った先生の声で生徒達は席に着く。今日は大まかな学院生活の説明を聞き、解散となった。


 部屋に帰ると早速晩ご飯の準備に取り掛かる。寮に来る前、邸のコック達にお願いしておいた物を持ってきて良かった。

粉状になったコンソメとブイヨン。コックにコンソメとブイヨンの作り方を教えて兄に魔法で粉状にしてもらった物。これがあるとかなり違うよね。


 野菜スープを作り、パンを捏ねる。某高級食パンのような柔らかいパンね。あ、食パン型がない。後でセバスにお願いしなければ。


今回は仕方ないのでコッペの形にする。魔法使用で時短コネコネ。パンは明日からの私の食糧。多めに作る。嫌な予感がするしね。オーブンに入れ、小麦の焼ける香りとバターの香りがしてくる。香りだけで幸せな気分に浸れるわ。この香りに誘われてやっぱり来ました。


さすが兄。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る