第11話

 ゴムが出来てある程度の量が見込めるようになった事で父とセバスチャンは私を会長とした商会を新しく設立してくれたみたい。勿論収入の半分は領地になんらかの形で還元する予定。


 2年後の私の学院生活が始まるまでにやる事は沢山あるんだけど、何度となく領地視察して気づいたのは上下水道。


台所やトイレで出た下水は地下に掘ったトンネルを通り川に流れて行くんだけど、トンネルではスライム的な生き物が汚物を食べて浄化してくれてるらしい。下水はあまり触らなくて良さそう。


 問題なのが上水。街に数カ所しかない井戸水を汲み上げて使用している。街が発展していく上では足りないのでこれは早めに改善しないとね。


食品を扱うお店では魔術で浄化したお水を樽で売買しているみたい。


公衆衛生は大事。しっかりしないと赤痢やコレラみたいなのが流行るし、実際問題数年に一度は他国も併せてどこかしらで疫病が流行するようなので対策はとりたい。


この世界はまだウイルスや細菌の概念がないようなので衛生対策もまだまだ。と、考えて兄のいる週末の夜に執務室で家族会議を開きました。


「お父様、今日の議題なのですが、街で使用されている井戸水だけでは住民が必要な量が確保出来ていないのではないかと思いました。実際問題、毎日の入浴や洗濯をしていない住民も多く、不衛生で起こる病気も多いと聞きました。住民は飲み水以外の水は川の水をろ過し、街に水道として引き、多くの家庭で使用出来るようにしたいと思っています」


「これは大工事になりそうだね」


「アイラ、その費用は何処から出るのかしら?」


「上水施設を作るには、まずお父様とお兄様の魔法でドカーンとやって施設を作る土台の敷地を作って貰って、後はゴム製品の収益から施設費を捻出したいと思ってます」


のろ過装置と川から水を引く図や街までの水路を書いた書類を父に渡す。飲み水までのろ過装置は現段階で私の知識の限界により難しいから飲料水としては駄目だろうけど、生活用水は沢山有っても良い。非常用には飲めるけど、安心安全な飲料可能なろ過装置をそのうち考えてもらおう。


「施設維持については浄化の魔術が使える方を雇う事になるとは思いますがどうでしょうか?」


兄が企画書を読みながら何やら頭の中で詳細な設計図を起こしてる模様。


そしていつもの如く、にやけながら『流石僕の天使』って呟いてる。


「アイラ、母に役立つものはないの?」


んー。流石母。話題があっさり切り替わった。化粧水やらハンドクリーム位しか思いつかばないな。でも、尿素やグリセリンの素なんて分からないからなー。そうだ、タオルはどうかしら?この世界はまだ布切れという感じなのよね。爪に引っかかってピーって糸が出てくるようなタオルがないなら作ればみんな喜ぶに違いないわ。


「お母様、ふかふかタオルやフレグランスウォーターなんてどうでしょう?タオルを作ると色々と汗掻きには重宝しますし、ふかふかベッドが更に心地よくなると思います。そしてフレグランスウォーターを作り、毎日のお風呂や飲用でお肌の調子が良くなると思うのですが」


母の目が光りました。そのビームで射殺されそうなきがする。


「アイラ、早速紙に書いて頂戴。ノア、必要な物の詳細設計をして。セバス、即刻取り掛かれるように手配を」


こうして家族会議は終わりましたわ。


 街でタオルを作る工場が出来れば一大産業になる予感。うふふ。街が発展して、領地は潤い、私の懐も潤う。私の理想的な自堕落生活にまた一歩近づいているわ。


ウエルカム自堕落生活。


 学院に入るまでの2年間は忙しく過ぎてました。あ、リチャードとの手紙は月1でやり取りしてますよ。お互い遠い領地なので会う事も無いし、その辺は全く進展なしね。

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