第10話

 邸に帰ってからの毎日は忙しく過ぎていった。アイラの日常は家族揃ってのご飯から始まり、午前は座学、午後は魔術の勉強と小屋での実験。


兄にくっついて剣術を習ってみたんだけど、私は恐ろしく才能が無い事に気づいて断念。諦めも肝心よね。


一応、たまに侍女のリリーから護身術は教えては貰う程度。魔法が使えればそれなりに探索に行けるしね。


 小屋での研究はというと、ここの所ずっと天然ゴムと格闘してようやくゴムのシートが出来ました。やったー。文明開花の音がしてきた。


 早速父の執務室へ向かう。何故だろう。私が執務室に入るといつも家族全員とセバスがスタンばってる。兄なんてソファに座り、私を膝の上に乗せようとウズウズしっ放し。そんな兄を横目に見つつ


「お父様、ついに完成しました。これがゴムシートです。熱と薬品で加工し、好みの形に成型すれば多種多様な製品を作る事ができます」


そう言って手のひらサイズで作った木の馬車の車輪部分を見せる。


「これは見本なのですが、車輪部に取り付けると多少の振動は軽減されます。サスペンションなる物を取り付けると更に振動が減り旅が楽になります」


サスペンションの大まかな原理は理解はしてるけど、こればかりは職人へ丸投げが必要。ゴム加工やタイヤの加工については当分は魔法でやる事になりそう。


 今思い出したけど、アスファルトなんか憧れるよね。作り方全然分かんないから出来そうに無いけど。そのうち魔力のない領民達にゴムを始め色々と作って貰える仕様にも変えていかないといけない。

 出来上がった見本を父やセバスは興味深そうにみてる。母は頭の中で既にそろばんを弾いてるよね絶対。そろばんはこの世界に存在してないけどね。


兄はやっぱりギュウギュウ抱きしめてくる。実はこの兄、妹馬鹿なんだけど、超が付くほどの秀才。ゴムの加工にも一肌脱いでもらいました。


でも口癖は妹マジ天使。事ある毎に余計な賛美の言葉が紡がれる。それさえ無ければ私も超ブラコンになったかもしれない。


まあ、そのうち手料理でもご馳走してあげよう。


 父からGOサインが出ました。すぐさま領地にゴムの木(仮)林を作る事になり、木を植える事になりました。






 育てていざ採取となるまでに5年もの月日がかかった。その間に変わった事は、私は10歳となり、兄は泣きながら魔術学院へ入学。普段は寮生活をして、何故か週末は領地に帰って妹成分補充をしてます。


 兄は我が家の改造馬車を使い帰宅。馬車内は快適なのと、地面との摩擦が減ったせいか、馬のスピードも上がり、魔法との併用で2時間程で領地に帰宅可能となった。


兄は寮を使わずに通いたいようだけど、毎日フルスピードの馬車はお馬さんにとっても、周りの歩行者にとっても迷惑だからね。命大事!


毎週末帰宅する兄の改造馬車を見て他の貴族から既に問い合わせが来てるとかどうとか。


 父はというと、まだゴムの量産が出来ないため、まずは改造馬車を王家へ売り込み、ぼったくり価格で王家の馬車にタイヤとサスペンションを組み込んでた。馬車内でも椅子のクッション部分に私の提案でコイルクッションを採用し、かなり快適な仕様となったらしい。

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