第7話
私は家族団欒の食事を終えるとウキウキした気持ちを抑えながら部屋に戻る。何度も書き直し、投げ捨てそうになったが、ようやくまとめた書類を渡しに父の書斎に赴く。
「お父様、今日の視察の書類をまとめてみました」
セバスが部屋を開けてくれるとそこには父だけではなく、母も兄もいて、ソファに座っていた。はっ、私はみんなに待たれていたの!?この書類、大丈夫よね?変じゃないよね?
「アイラ見せてごらん」
そう言うと父は私が渡した書類に目を通す。
「よく出来た書類だね。やはり我が家の天使は素晴らしいよ。どうだろう、そろそろパパに詳しくお話ししてくれないかな」
読み終わった書類をすかさず兄や母が読んでいる。母は和かに微笑み、兄はやはり僕の天使だと感激に打ち震えている声が。
「ええ。お父様。実はこの書類を見て貰っても分かる通り、私は中身が大人なのです。詳しくは前世の記憶を有して生まれてきたようなのです。信じ難いかも知れないのですが、前世ではこの世界とは違う世界でした」
兄は私を膝の上に座らせ満面の笑みで話を聞いてくれてます。
「私の過ごしていた前世では魔法の概念は有りましたが魔法自体は使えなかったです。代わりに科学が発展しており、今世の文明より進んでいました。私の育った国では戦争も長い間無かったため、治安も識字率も世界一だったのです。
私は今世の文明は好きですが、魔法の使えない領民の暮らしをもっと豊かにしたいので広く浅いですが、前世の知識をフル活用していこうと思っています。私の知識は浅く、ほんの一部なんですが、実現出来ることからやっていきたいのです」
私はさっと提案書を父に渡した。父は提案書をじっくりと見ている。今度はセバスも一緒にみてますね。
「アイラの居た世界は驚くほど繁栄していたようだね。早速出来そうなのがいくつかあるからパパの方で手配しておこう。後、大事な話なのだけど、まだアイラは5歳だ。この歳で全て改革をしてしまうとアイラの身が危なくなるのは分かるかな?その辺はパパ達に任せてくれるかな」
「はい。お父様。私は自分が有名になりたくはないし、将来は自宅魔法研究員になりたいと思っているのでお父様に全てお願いします」
つい自宅って口に出して言っちゃった。引き篭もっていたいしね。兄は一言も発せず、ただギュウギュウと抱きしめてる。苦しい。
家族会議が終わって数日後、視察時に取り付けた樹液瓶をセバスが回収してくれたようで、小屋に運んでくれていた。気になる樹液はあるかなー。
実は私が取り付けた瓶以外にも使用人達も陰から手伝ってくれていたようで領地内外から採取された場所の紙が置いてあった。みんなありがとう。
この御恩はいつか返すよ!多分。
とりあえず目的の樹液を探すべく、1個ずつ匂いや粘度、香りを確かめていく。
そうそう、我が領地の特色としては1年を通して温暖な気候ではあるんだけど、夏はやはり暑い。冬は暖かく春夏秋の3つの季節で過ごす感じ。王国の北側の領地は雪も降るらしい。
65番と書かれた樹液瓶に気になる白の樹液があったのよ。65番瓶は使用人がもう少し南にある領地である実家から採取してくれたみたい。
ありがたや。
数日経ってるせいか表面が乾いて硬いんだけど、瓶からベリベリと剥がすと結構な弾力。これは探し求めていた物に違いない!
ヒャッホー!嬉しさの余り瓶を持ち上げ踊っていると、後ろから
「瓶を持ちながら踊る姿も天使」
なんて声が聞こえてくる。いつのまに。恐るべし兄。
「お兄様。この樹液が取れた木を屋敷内に何本か植えて欲しいのです」
「可愛くお願いしてくれたら考えるよ」
えー。面倒だなって思ったのは内緒。仕方ないやるか。上目遣いで目を潤ませて言うんだっけか。あ、頭もコテンとする事も忘れずに。ラノベ情報大事ね。
「お兄様お願い。アイラのお願い聞いて欲しいな」
兄はよろめき、心臓を押さえてる。とっても苦しそうだ。チョロいな兄よ。セバスはどこかで見ていたのか直ぐに現れて兄の指示なく、すぐに取り掛かってくれました。
私のちっぽけな努力は無駄だったようだ。
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