第11話 始まる悪夢

人間は、その感情が許容量を超えてしまうと笑う事しか出来ないと聞いたことがある。

私だって例外ではない。戦う為に育てられてもいない、私の心の何かが壊れてしまった。

人を人たらしめる、理性、常識、感情。

それが壊れれば人は廃人になる。


私は大笑いをした、母の死体の前で。

何故かは分からない。ただ無性に笑いたくなったのだ。


おもむろに刀を取り出し、何十、何百、何千と切り掛かる。


しかし彼は傷ひとつつかず、笑ったままだ。

私はその激情のまま彼に襲いかかった。


その時…


「帝王様、流石にやり過ぎでは?

竜化の最終形態、半竜人にでもするおつもりですか?」


従者のエディが話しかけてくる。


「いや、これぐらいじゃないと。

しかも彼らはおそらく半竜人になれる素質もちゃんとあるんだから。

逆にこんな簡単な幻覚で出てきてくれたら嬉しいんだけどね。」


その時、倒れている6人のうち1人、冥鱗紫炎がおきだした。

「術を無理やり解いたんですかね?」

「そんな事はどうだっていい、やるぞ」

そう呟くと俺は紫炎に切り掛かる。

彼女はまだ術を解けきれてないようだ。

エディの援護もあり島が崩れないように処置をしてもらう。


凄い力だ。半竜化も出来ておらず、幻術も取れていなくてこれか。


「全く、私の世代もうかうかしてられないね。」

「貴方がやられるわけないのに何言ってるんですか。」


その時、幻術の中で私はいやシエンはおかしくなっていた。


「あはははははは!切り刻まれて死ね!

あはははははははあはっ!あはははははははははいーっひひひひひひひひひ」


その時たしかにあった一つの感情。お母さんを殺したこいつを殺す。その強い殺意で刀を強く握り切り掛かる。


–力の極みを–


その時体が大きくなり始め頭には角が生え、身長は3mぐらいになり、そして、いわゆる九尾のような金色の毛並みと9本の尾が生えていた。


その時彼はカッと目を見開き


「やっと見つけた!しかも半竜化も出来てる!間違いなくこの尻尾と角、何年振りのご対面だ。"セリアナ"!」


彼はその瞬間ものすごい爆風をおこし、私は少し飛ばされる。

問題はない。瞬時に体勢を立て直し、また斬りかかる。

術を同時並行で行え。防御を怠たるな。

さっきまで何も見えていなかった彼のうごきが普通に見えるようになった。


しかしその刃は彼に届くことはなく


–エミルカ、落ち着いてよく見て。–


何処からかそんな声が聞こえてくる。


–この状況をちゃんと把握して–


その声により、冷静さを取り戻した私は

倒れているみんなの所に走り出した。








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