第3話〜下克上して成り上がったお嬢様は

少しして、泣き止んだ所でお嬢様は突飛な事を言い出しました。私は頭を撫でるのをやめて、お嬢様を離しました。


「なら…リリーがこの家の当主になる!」

「本気ですか。」


お嬢様はベットから離れて、裸足で床に立ちました。まだ目は赤く涙は零れたままですが。その目には決意がみなぎっておりました。


「もう泣いてられないですわ。リリーは決めましたもの、当主になってオスカーよりももっと大きくなって、この家でずっとオスカーと過ごすのですわ。」


お嬢様は私を指さして、そうおっしゃりました。私はまた驚かれました。


「リーガルお嬢様、当主は代々長男が継ぐ事になりそして1番上のお嬢様の旦那様である…」

「そんなの関係ありませんわ。部外者に任せるのが良いのですの?」


それは…痛いところをつかれました。旦那様も奥様も上のお嬢様の旦那様には、あまり良く思ってはおりません。


家柄だけで結婚したものですから、夫婦仲も良くないと聞きます。そんな状態で家の当主が出来るか、出来ないかと言えば…


「それに、キサマは誰のメイドかしら?」

「私はあなた様の、リリーお嬢様のメイドであなたをお守りするよう、旦那様と奥様に命じられております。」


私は賭け事は嫌いです。でもお嬢様になら賭けても良いと、そう思っております。そしてあなた様の命令ならばリリーお嬢様、とお呼びしましょう。


「これからは猛勉強猛特訓ですわね。」

「いつも以上に厳しく行きますよ。」

「ずびっ、えぇ!」

「鼻水が出ておりますよ。まだ無理は出来ませんよ、リリーお嬢様。」


ハンカチーフでお嬢様のお鼻を包み、鼻水を拭きました。これからはとても忙しくなりますよ、リリーお嬢様。


そしてお嬢様の当主に成り上がる為のお勉強や政治学、教養などをし、旦那様と1番上のお嬢様の旦那様に下克上を致しました。

旦那様達の猛反対や嫌がらせを諸共もろともせず、お嬢様は成長し続けています。


社交界デビューも華麗にやってのけて、1番上のお嬢様の旦那様の不祥事、今までの嫌がらせの証拠、不倫を見つけて1番上のお嬢様と離婚をさせました。


そして旦那様と奥様ですが、奥様は全面的に賛成で旦那様は最初は猛反対しておりましたが、次第に渋々任せる事になったようです。


「もう15年前は私より、あんなに小さくお転婆でしたのにこんなに大きくなりましたね。」

「あの日に誓った事を全てやったんだ。」


白い髪は相変わらずで、髪型は1つに結んでおり、綺麗なドレスと当主の証である不死鳥のブローチをつけております。

私よりも大きく、今はお屋敷の元は旦那様のお部屋のバルコ二ーで黄昏たそがれております。


「オスカーは小さくなったね。シワも増えて白髪だって…」

「今日のお夕食は抜きに致しましょうか?リリーお嬢様。」

「冗談だって。はは、オスカーだけだよ。私が冗談を言ってそれで…リリーって呼ばせているのにも。私は君さえ居ればいいんだよ。」


他の上のお嬢様は子供に恵まれて、他の家でも楽しく暮らしております。そして離婚した1番上のお嬢様もまた再婚して幸せに暮らしております。

しかし、リリーお嬢様は婚約者すら居ないのです。もう23になったというのに。


「リリーお嬢様はこれからも天涯孤独を貫き通すつもりでしょうか、跡取りはどうするおつもりで。」

「あまり考えてなかったな…跡取りは上のお姉様方から養子を取ればいいしさ。」


お嬢様はずっと夜空を眺めておりましたが、こちらを向きました。不死鳥のブローチがキラキラと輝いておりました。


「それに天涯孤独じゃない、私にはオスカーがいるってさっきも言ったでしょ。君が居なかったら、今の私はいなかったんだ。」

「それは…私も同じでございます。このオスカー、墓場までお嬢様の健闘を見守ります。」

「はは、それは頼もしいね。これからもよろしくね、オスカー。」


これからもお傍に置いてください、リリーお嬢様。

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