第2話〜お嬢様だとしてもまだまだ子供

リーガルお嬢様はお転婆娘で人一倍目立ちたがりです。そして、この日までは、ただ人を困らして楽しんでいるだけだと私は思っておりました。


この日は上のお嬢様が社交界デビューをするので、私はリーガルお嬢様の支度を手伝わなければならないのです。


リーガルお嬢様のお部屋の扉をノックし、入室しました。私はお嬢様のお部屋に入った瞬間、驚きました。

彼女のお部屋は普段とは違い、全てのオモチャが片付けられており、ベットには小さな出っ張りがありました。


「リーガルお嬢様、支度の準備をしなければ…」


わたくしはベットの布団をまくってお嬢様を外に出そうとしました。


ーリーガルお嬢様の目は赤く、口角は下がって目から涙が溢れておりました。私は初めて彼女が人目も忍んで、泣いている所を見ました。


「リーガルお嬢様、どうなされたのですか。お体の調子が良くないのですか?それともどこか怪我をしてしまったのでしょうか…」


私は慌ててしまいました、私はお嬢様のお手本にならなければならないのに。そして、お嬢様はそんな様子の私を抱きしめました。


髪もボサボサで、お洋服だってシワがある状態でリーガルお嬢様は、私の胸の中で泣きました。声を押し殺して。


「私には言えない事でしょうか。ほんの些細な事でもいいのです、泣いていらっしゃる理由をお教えください。」


リーガルお嬢様はゆっくりと話し始めました。私は勝手ながら、抱き締め返してお嬢様の頭を撫でてしまいました。


「ひっく…うぅ、リリー、リリーね?お姉様達がみんな、みんな、どこかに行ってしまうの、嫌でしたわ。

お父様もお母様も忙しい、って、言って、リリーの事…ずっと、遊んでくれない。」

「そうでしたか。」


この時、感じたのです。リーガルお嬢様はただ人を困らして楽しんでいるのではなく、ただ構って欲しかっただけなのです。


「だから私にいつもイタズラをするのですね、構って欲しいから。」

「…うん、オスカーしかリリーの事、構って貰えないから。」


上のお嬢様達はすぐに学校に行き、ご友人をお作りになられるのでこういった事はなかったのかもしれません。


しかし、リーガルお嬢様だけは自宅学習でございます。本来は上のお嬢様達と同じ学校に行くはずでしたが、その学校で盗賊達が乗り込んでしまったという事件が発生したのです。


奥様と旦那様はそれに大変衝撃を受けておりました。だから、お嬢様にご友人はいません。ずっと1人だったのです。


「リーガルお嬢様…」

「リリー、リリーって呼んで。もっとリリーと遊んで。もっとリリーと話して。」

「それは出来ません。私はメイドで、あなたは時期にこの家から出ていくでしょう。嫁ぐ頃には、メイドの事もこの家の事も忘れているでしょう。」


それを聞いて更にお嬢様は泣きだしました。

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