末っ子お嬢様とメイドの下克上

第1話〜上流貴族の一族で才色兼備…の予定ですが

わたくし、この屋敷で長年メイドをしております。


結婚や家庭には興味はありません。わたくしは奥様と旦那様に一生を掛けて奉公すると決めておるのです。


これには深い訳があるのです。


まだ私が未熟な少女だった時に奥様と旦那様が、私の村に訪問してきたのです。その際に私は流行病にかかってしまったのです。


そして奥様と旦那様が私を医者に連れていき、生死をさまよっていた私を救ってくださったのです。


しかし、最近では…


「リーガルお嬢様、お勉強の次はマナー講座のお時間でございます。」

「嫌、いやいやいやー!そんなつまらないものなんてやりたくないですわ!」


奥様と旦那様の間には5人のご息女に恵まれましたが、末っ子のリーガルお嬢様が我儘わがままばかりで手もつけられないのです。

リーガルお嬢様は白髪で、私の胸の下ぐらいの身長、そしていつも黒いお洋服を好んで着用されております。


「このレッスンをこなさなければ、立派な淑女にはなれません。」

「淑女になんかなりたくないです!リリーは外で冒険をするのですわ。」

「お待ちください、リーガルお嬢様。」


こうやってレッスンや講座を拒否しては、私と追いかけっこをする日々。もう8歳になられたのですから、フェニクッローム家の五女として落ち着いて欲しいものです。


またある日は、


「オスカー!リリーとかくれんぼをしなさい!これは命令ですわよ。」

「致しません。今日はピアノとヴァイオリンのレッスンとなっております。」

「そんなのオスカーがやればいいのですわ。」


そうやって一日を隠れんぼの日にしたり…お陰で私の腰や足は木の枝のように固くなってしまいました。


またある日も


「オスカー!今日はお菓子の日ですのよ、だからお菓子を目いっぱい食べてもよろしい日なのですわ。」

「そんな日はありません。先程、昼食は食べられたはずです。無駄に食べ物を食しますと、リーガルお嬢様のお体に障ります。」


私はこの日、リーガルお嬢様の目線に合わせました。これが間違いでした。


「そんなに言うんだったらキサマも食べてみてはいかがかしら?」

「むっ…んん、メイドの口に物を急に入れないでください。はしたないです。」

「にゃはは!オスカーがはしたないわ。」


誰のおかげでこうなっていると思っているんですか。しかもこのクッキーは奥様が他の上流貴族の夫人に献上する、と言っていた甘味だそうで…私とリーガルお嬢様はこってり怒られました。


リーガルお嬢様にはこのフェニクッローム家の繁栄の為に、他のお嬢様達のように良い所に嫁いで欲しいだけなのです。


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