第5話 ひみつのお手紙。

「そういえば昨日はあまり片付けできなかったな。と言っても大して片付けるようなものも無いけど…」


 何かいらないものは無いかと引き出しの中を覗いた。

 筆記用具が入っていたり、メモ帳が入っていたり——あ、これ懐かしいな。『おもいで』って書いてある。汚い字でそう書かれた古いアルバムを手に取った。


「よいしょ、と」


 ベッドの上に横になり表紙を開けた。

その中身はほとんどが香帆里と二人きりで映っている写真で、なんだか照れ臭く感じた。

 庭でビニールプールを広げて遊んでいたり、一緒に昼寝をしていたり、今となっては考えられないような光景だった。

 一枚ずつページをめくり、その度に忘れていたものを思い出す。色褪せた写真からは鮮明に思い出せないようなものもあるが、ほとんどの記憶が蘇った。


「懐かしいなぁ…」


 俺たちが今こうして過ごしている時間もいつかは忘れるのかな…?そしてまた思い出したら、その時は俺たちはどうなっているのだろうか。俺はこのままでいいのだろうか。このまま胸に秘めた想いを伝えることもしないで——。

 そんなことを考えながら夢中になってページをめくり続けていると、一つの封筒が間からヒラリ、と出てきた。


「…なにこれ。へそくり?」


 顔の上に落ちてきたのは白い綺麗な封筒。いったい誰が何のために挟んだのか正直一切分からない。

 だが、この際誰のものでもいいだろうと思ってその中に入っていた二つ折りにされた一枚の薄い紙を取り出した。


「手紙…?」


 どうせ授業か何かで書いたやつだろうと思いながら中身を確認してみると、そこには大きな歪んだひらがな達がびっしりと並べられていた。


『きょうは かおりちゃんといっしょにあそびました。すごくたのしかった。へんなおままごとは よくわからないけど これからもかおりちゃんとずっといっしょにいるって ゆびきりしました。ぼくは おおきくなったらかおりちゃんとけっこんするがゆめです。7がつ21にち ひで』


「んんんんん!???」


 あれ、いつの間にか香帆里にプロポーズしてた!?しかもずっと一緒にいるとか書いてるし!?

これってなんかめちゃくちゃ恥ずかしくない!?


「あ、でも昔のことだから忘れてるか——ってそんなことなかったー!この前の登校中に言ってたのってもしかしてこのことかー!!」

「秀明うるさい!」


 そうやってベッドの上で叫び、のたうちまわっていると、一階にいる母から怒られてしまったので一度口を塞いで落ち着くことにした。

 しかし、それでもやはり『結婚』というワードが頭の中を駆け巡り、思考がショートしてしまう。


「あぁぁぁー!これからどうやって接したらいいんだぁぁぁ!」

「秀明、うるさいって言ってるでしょうが!」

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