第4話 お片付け。

「わぁ、ヒデくんのお部屋にくるの久しぶりな気がする!」

「一昨日も来てたし…」


 こうやって香帆里が家に来るのは、全く珍しいことではない。

 異性の家って気軽に来られるものじゃないと思うけどもやっぱり僕はただの幼馴染か…。


「今日はお部屋の片付けをしよう!」

「なんでそんな急に。いつも綺麗にしてるし、片付けするほどでもない気がするけど…」

「そんなことはないよ、ヒデくん!一見綺麗な部屋でもほら、こうやって押し入れの奥の方に隠しているだけのことが多いんだよ!」


 そんなことを言いながら彼女は慣れた手つきで、僕の隠していた少しだけ、そう、ほんの少しだけ大人向けな雑誌を取り出した。

 どうやら香帆里自身もそんなものが出てきたことに驚きを隠せない様子だったが、ゴホン、と咳払いをしてすぐに冷静になった。


「ほうほう、ヒデくんはこんなスタイルの良いお姉さんが好きなんだね。どれどれ中身は——」

「わ!勝手に見るなっ!」


 興味があるお年頃だったのだろうか、それともただの好奇心からだったのだろうか、香帆里はその雑誌をペラリと開けて一気に顔を紅潮させた。


「……ひ、ひひひひひひ、ヒデさん!これは少々えっちすぎやしませんでしょうか!?そしてこの付箋の貼ってあるページは私も見てもよろしいのでしょうか!?」

「わわっ、押し付けるな、押し付けるな!折り目がついちゃうだろ!」

「ご、ごめんなさい…」


 強引に取り上げてもよかったのだが、そうしてあの本が破れたりしたら…。というかずっと読んでるし、もう諦めて気が済むまで放っておいたほうがいいのか…?


「やっぱりこの付箋のあるページにはヒデくんの一番のお気に入りの子がいて、その子はヒデくんのヒデくんでいっぱい汚されてて…。恥ずかしいけどこれは彼の趣味を知るチャンス———!」


 彼女は恐る恐るページを開けて薄目でその中を覗き、よっぽど刺激が強かったのか倒れてしまった。


「はううぅぅ……。すごく…大人…デス…」

「おい!香帆里!?香帆里!?」


  ・  ・  ・


「…あれ、ここはヒデくんのベッドの上?」

「そう、本の中を見て気絶してたんだよ」


 あれから二十分程度経ったころに香帆里は目を覚ました。これからはもっと見つかりにくい場所に隠すとしよう…。

 どこが一番最適な場所なのだろうかと頭を働かせていると、香帆里がつんつんと肩をつついてきた。


「ねぇヒデくん。私…初めてだったんだけども優しくしてくれた…?激しいのはまだちょっと…」

「ねぇ何の話!?もしかして何かひどい勘違いしてない!?」


 予想を遥かに超えてきた彼女の発言が俺を動揺させた。しかも初めてって…!いかん、想像したらダメだ…!香帆里は俺のことはただの幼馴染としか思ってなくて、になるはずは絶対にないわけで!


「寝てる時に私のこと、襲ってないの…?」

「僕そんなヤバいやつじゃないから!」

「そっか…。でもヒデくんならいいよ…」

「ん?何か言った?」

「ううん、なんにも!」


 え、今のどういう意味だ…!?

本当は聞こえてましたって今から言ったらもしかして!?もしかしてそういうことになっちゃう!?その発言は僕じゃなきゃ勘違いしちゃうよ!?

 こうして考えすぎて今夜は一睡も出来なかった。


「——あ、布団に香帆里の匂いが…」

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