第5話 初めまして❺
俺はあの方にイトシラさんの存在を
確認するべく、彼女の手を掴んであの方の
もとへと急いだ。この時の僕に感情は
無かった。ただ、彼女を消すか消さないか
だけを考えていた。
僕は色々な可能性を考えた結果、最短ルートであの方のもとに行く事にした。
門番の力を使い、空間を動かして目の前にこの空間の出口となる彼女の道を移す。そして、万が一彼女が生者だった時を考えあまり
辿らずに外れて門番とあの方以外の者は
本来見る事も通る事も叶わない、簡単に例えるなら、関係者専用通路のような所を通ってあの方のいる店の入り口まで来たら、彼女を抱えて、あの方の元に連れて行った。
「いらっしゃいませ。
こちら忘れ物販売所でございます。」
店主が優しい口調で、
穏やかに僕らを迎える。
この言葉は、決まり文句だ。
どのような客が来ようと、
全てはこの言葉から始まる。
「ツ、ツモリくん、あの...、ここは何処?」
(まだ、シラを切り通そうとするのか、
あるいは、本当に違うのか。
まだ気は抜けない、何時でも始末が
出来るようにしておかなければ。
きっと、おばあちゃんは次の一言で
教えてくれる筈。それまでは...!)
「千尋、大丈夫ですよ。」
ダイ...ジョウブ...?
(大丈夫?じゃぁ、本当に人間なのか?
だったら、何故触れた...?勘が良すぎるし...
霊能力者の家系でもない筈だし...、
まぁ、でも、何にせよ、)
「...ヨカッタ」
彼女は排除対象ではなかったんだ。
謝って、許しを得てから元の世界まで
送って記憶を消そう。それで今回の件は、
万事解決の筈だから。
「ふぅ〜、」
おばあちゃんがため息を吐いた気がしたけど、
気の所為か?
「石徹白 小春さんですね。」
「えっ?あ、はい。」
「...。そうですか。千尋、お茶の用意を。」
(どういう事だ?まさか、
この子を店にあげるのか?
でも、元を辿れば僕の失敗だから、
お茶くらいならお客さんとして
もてなすのもいいか。)
「はい」
「石徹白さん、こちらへどうぞ。」
「はい...、お邪魔します。」
彼女が、少し縮こまったような、
緊張した面持ちで、オズオズと室内のに
入ってきた。
僕は、あの方の意図を測りかねたままだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます