第2話 初めまして❷
(さて、彼女も見送れたし。
取り敢えずここは閉じて行こう。)
彼女を見送った後、俺は番人の仕事である、境の入り口と出口を閉めに戻った。
今さっき出たところには、もう既に奴らが
集まって来ていた。
奴らとは、所謂怪異、妖怪、幽霊、
と呼ばれているもの。
そして、ここに居る多くのものが、
悪霊、生霊、妖怪などと呼ばれるもの達だ。
皆、元は人であったので、人に関わるものを求める傾向がある。とは言っても、
こんな隙間に集まるのは雑魚しか居ない。
(さっさと、片付けるか...。)
片付けるとは、要するに祓うこと。
祓うとは、消滅させたり、
その場から立ち去らせたり、成仏させたり
とその方法は様々だが、俺は主に
消滅させる事で祓っている。
因みに、成仏するあるいは、させる事が
出来るのは、稀である。と言うより、
無いに等しい。
俺は長く此処にいるが、
今までそれを見たのは一度きり、
しかもあの人がそれをしているところ以外、見た事が無い。為、不可能に近い事だと言う事は、考えずともわかった。
俺は境目からこちら側に入り、内側から境目を閉めるため、出口に迫って来ている奴らを一旦排除する。とはいえ、あまりそう過激な事はしない。無論、刀なども使わない。
ただ、触れたり潰すだけである。
そして、半径五メートル程片付けて
いよいよ出口と入り口を閉める作業を
開始出来る。
出口に内側から一時的に強い呪いをかける
と同時に同じくらいの結界を
出入り口両方にかけ、
呪いを弾く為の対照的な呪いを
入り口にかける。そしてそこに術者の血
またはそれに準ずる物、
要するに、証たる物を使って
術を全て完成させる。そうすると、
結界の中で、相反する術同士が存在している状況の中、同じ結界同士がくっつき合う様に近寄って来る。これにより出入り口が
一直線になり、距離も近くなる為、
結界同士が合わさり、半径五メートルの球形に完成する、そして、結界に押されて
溢れた部分が行き場を失い、何もない
出入り口に入り込む事で、一応の修復が
完了する。次に、呪い二つを同時に解いて
結界を外し、修復した部分に入り口には
ある種の呪文の様な少し短い文を、出口には
『封』か『緘』の字を書き入れる。
そして文字が消えたら、境界の出入り口を
閉められた事を意味するので、
一番最後に近づけて小さく縮めていた空間を元道理にする為に広げれば、作業は終了だ。この最後の広げる作業は今のところ
番人である俺と、あの人しか出来ない事だ。
作業を終えたら、境界にひずみなどが
出来ていないか、確認しながら
先程閉めた出口から、入り口に向かって
来た道を戻る。
少し歩き、そろそろ入り口と言うところで、
珍しく奴らが集まっているのを見つけた。
(あそこだけ、なんか集まっている...?
いやっ、あそこはさっき閉めた入り口だ。
何をしてるんだ...?)
俺は、奴らが集まっている理由を知る為、
奴らに気付かれない様、細心の注意を払って奴らを観察した。
すると、驚いた事に奴らは閉めた入り口を
開けようとしているのだ。
しかも、その殆どが悪霊に成り果てた者達が集まり固まって、一つの個体と成り
知性を持った物達だった。
(あいつら、まさかさっきの場所を
開けようとしてる...!?
あそこは周りと比べ、
個々が同化していない為
少し脆いとは言えほぼ遜色ないし、
厚さが周りよりあるため、
開ける事は出来ないはずだから、
気にしないとして、知性を持っている
奴らを野放しにしたら、
大変な事になる...!!
それに、なんか今日はこちら側の気配が
何かおかしい...
急がなければ...!)
主に、知性を持ち始めた奴半端な知性を
持っている奴は、優先的に消す対象
なのである。
そっと息を潜めて近寄り、結界の網を張る。
しかし、知性を持つ奴はこれでは火傷程度の傷しか負わないので、
結局は自分でやるしかない。
「...っ!?」
相手側が気付いた。
半端に知性がある分、
行動はある程度読めるので、
幼な子を相手にしているも同然なのだが、
それが複数ともなると、流石に面倒くさい。
元々が、悪霊の集まりなだけに
どれだけ祓っても、部分として消えるだけでどんどん中から補充され修復されるて
キリが無い。この手の奴の中では、
一番嫌いで、厄介なタイプだ。
(それにしても、こいつら何処に隠れて
たんだ?まだこいつらが不完全だからって
言うのもあって、
気付きにくかったのだろうけど、
それにしても、一日そこらでこうは
ならない筈だ。
って、あれ?
今一瞬、此処にある筈のない
魂を見た様な...。
...いやっ!見間違えじゃない!)
きっと、道を逸れて
間違えてしまったのだろう。
(なんとしても、あの御魂を保護して
元の道に送り届けなければ...!!)
しかし、あの魂が此処に居てくれてよかった。
これで、正々堂々と番人の力を行使出来る。
番人は、こちら側で生まれたモノに対しては番人の力を使い、祓うことが出来ない。
しかし、その制約にも例外がある。
それは、迷い込んでしまった者を導く時や、
こちら側に害がある時などだ。
今回の場合、害があるのはあちら側なので、この例外に当て嵌まらないのと、
知性を持つことは、我々にとって
間引かなくてはならない対象というだけで、自然と持ったのは仕様が無い事なので、
これもやはり例外には
当て嵌まらないのである。
しかし、それもこれもあの御魂が居なければの話である。
あの御魂が居る事を番人である俺が把握した以上、俺はあの御魂を正しい道へ送り届ける迄は、番人の、神の使いの力を御魂の居る場所から正しい道までの直線距離だけだが、
半径三メートルの中のみ、
使うことが出来るのだ。
俺は御魂の側まで駆け寄ると、
番人の力を使い、先程張った結界の中に新たな、神域と同じ波長を持った領域を作った。これは、神様の結界の様な物なので、
その場に居た奴らは一掃された。
一連の事を終え、俺はあの人にこの事を報告すべく、店へ戻るのだった。
あちら側はもうすぐお昼時だろうか。
(彼女はもうお昼を食べている頃だろう。
やはり、一人で食べるのだろうか?
いや、それは無いな。
きっと、女子達が放っておかないか。
もしかしたら、男達もかもな。
なんにせよ、またあの子に会える
次の仏滅が楽しみだ。あの子の事だから、
仲の良い子とか直ぐに出来て、
笑ってたりするんだろうなぁ...。
いや、というか何少し落ち込んでんだ?
まぁ、いいや!笑顔が一番だし!
もし、報告が早く終わったら
少し見に行こうかな。)
なんて考えつつ、俺はあの人の元へ急いだ。
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