第2話 初めまして②

次の授業は数学だったが、

そこまで内容は難しくなかった。

それよりも、先程の男の子の事の方が気になって、授業にあまり身が入らなかった。

次の時間も、また次の時間も

彼の笑顔が、頭から離れない。

(なんか、変だ。)

そして、遂にお昼の時間になってしまった。

「石徹白さん!一緒、ご飯食べよっ!」

女の子数名と言っても

本当に片手で数えられる程度だが、

話し掛けてくれた。

「え?あ、うん。いいですよ。」

「もう!石徹白さん固い!」

「そうそう!タメ口でいいじゃん?」

「あっ!て言うかウチら

 自己紹介してなくね?」

「そっか、だからか...!」

「そんじゃ、アタシから...

 比嘉 香奈美、十五歳誕生日は、六月八日

 ヨロシクッ!」

「はい!じゃぁ次私!

 嘉賀 美沙子、同じく十五歳で

 誕生日は九月十七日!美沙子って名前、

 子が付いててフルクサイって言うか、

 ダサいから、『ミサ』って呼んでクダサイ!

 ヨロ〜。」

「じゃぁ、私最後ね!

 伊佐道 桜!十五歳の七月二十六日!

 よろしく〜!」

「は、はい。宜しくお願い致します。」

私はその三人の自己紹介の熱量、

とでも言うのだろうかに

圧倒されてしまった。

「だ〜か〜ら〜!タメ口でいいって!」

転校した事がある人は分かるだろうか、

このタメ口と言う物は、

私にはかなりハードルが高い。

でも、何か喋らなければと思い、

話題を探していると、

ふと、私は違和感を感じたが、その正体は

直ぐに分かった。彼女達は、ご飯を食べようと誘っているのに、手元に食べる物を持っていなかったのだ。

「あの、ご飯、どうしたのですか?」

「タメ口!タメ口!

 まぁ、無理にとは言わないよ?

 けど、アタシら友達でしょ?」

(いつから!?もしかしてあれですか!?

 噂でしか聞いた事のない、

 会った人は全員友達って言う

 ヨウキャと呼ばれる方々ですか!?

 でも、友達じゃないって言ったら...

 傷つくよね?)

「う、うん!

 そうだね!

 慣れないけど、こんな感じでいい?」

私がそう言った瞬間、彼女達は嬉しそうに

笑った。でも、今思うとそれは純粋な笑顔

では無かったかも知れない。

「OK、OK!そんな感じ!」

「あー、で、食べ物だっけ。

 もうそろそろ来ると思うよ!」

「?」

(どう言う事だろう。

 病室でもないのに...どっかのお嬢様かな?)

私は不思議に思った。ただ、確かなのは

嫌な予感がした事だけだ。

(どうか、この予感が当たりません様に...!)

しかし、そのあと直ぐ私の願いも虚しく、

嫌な予感は当たってしまった。

決して痩せていないが、

太っている訳でも痩せている訳でもない、

眼鏡をかけた三つ編みの女の子が、

教室に入って真っ直ぐにこちらに

向かって来た。

(あんなに荷物を持ってるのに、

 誰も見向きもしないなんて...!?)

最早、彼女は空気も同然の様にみんなから、

扱われていた。

「ぁ、ぁの...、買って...来ました...。」

「うん、じゃぁそこ置いといて。」

私は絶句してしまった。

(これは...虐めでは?

 いや、でもそれを決めつけるのは

 時期尚早だろう...。)

顔に出ていたのだろうか。

「ん?あーコイツ?

 えっと、アタシらのトモダチ〜

 チョ〜ッ優しくってさw

 今さっきも、自分から

 買いに行ってくれて〜w」

「そ、そうなんだ、ハハハ

 あ、じゃぁその子とも一緒に食べるの?」

「チッ、サ..ロヨ。

 ん〜今日は初めて来て、友達もいないし

 輪にも入れてない、イトシラサンと

 食べたいから、コイツはいいや。」

冒頭なんと言ったかは

あまり聴こえなかったが、何か棘の有る

言い方だった。

「そうなんだ、あの、

 あなたのお名前聞いてもいい?」

「ぁ、わたしの名m...「この子、真莉って言う

 の!仲良くしてやって!」

「まりちゃんか、宜しくお願いします!」

「は、はぃ...。」

「私が教えてやったんだから、

 感謝してもいいよ♡」

「は、はぁ。ありがとう?ね!」

「うん!」

この人達は苦手だ。

それに、心なしか周りに距離を置かれてる

様に思う。

(初日、こんなんで大丈夫かな...。)

唯二つ、私と真莉ちゃんを心配そうに、

タイミングを見計らう様に見る目があった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る