七 甲羅を背負わされたこと
河童たちは、長老を中心に何やら言葉を交わしていた。キュルキュルという音は、どうやら強弱や高低で意味が変わるらしい。
大きな河童が近づいてきて、喜兵衛を再び担ぎ上げた。それから洞窟の方へとペタペタと歩いていく。
何をするつもりなのだろう?ほかの河童たちもついてくる。
洞窟の中は薄暗くてジメジメしていた。あちこちで染み出した水が、ポタポタと滴となって落ちている。
大きなくぼみに水が溜まっていて、魚やナマズが元気よく泳いでいた。そこに
さらに奥へ進むと広い空間があって、喜兵衛はそこで下ろされた。壁には、たくさんの使われていない甲羅が立てかけられていた。
暗くてよく見えないが、それぞれ大きさが違い、色も模様もひとつとして同じものはない。長老が三つの甲羅を杖で指して、ほかの河童が地面に並べた。
赤みを帯びた甲羅、
河童たちは、甲羅と喜兵衛を交互に見比べながら、キュルキュルと意見を交わしていた。やがて、長老が「シューッ」と息を出しながら、緑色の甲羅を杖でコンコンと叩いた。
喜兵衛の後ろから、河童のぬらっとした手が伸びてきて、すごい力で押さえつけた。喜兵衛は逃れようとしたが、ほかの河童たちも腕や足をつかんでくる。
喜兵衛は着ているものをビリビリと引きさかれ、真っ裸にされた。きっと川の魚と同じように生のままで噛みつかれ、全身の肉がバラバラに裂かれてしまうにちがいない──!
だが、河童たちは喜兵衛の体に噛みつきはしなかった。長老の指示で、緑の甲羅が運ばれてきた。
喜兵衛はほとんど無理やりに、頭から甲羅を被せられた。狭い穴を力ずくで通そうとするので、痛くて仕方なかった。
甲羅の中は真っ暗で何も見えず、ひどい悪臭がした。
喜兵衛の悲鳴も構わず、河童たちは甲羅のなかに、喜兵衛の肩から胸、腹から足まで押し込んでいった。少しずつ穴を通るたびに悲鳴が漏れた。
どうにかこうにか全身が甲羅内に収まった。一度入ってしまえば、中には動けるだけの余裕がある。
次の瞬間、水かきのついた手が甲羅に侵入してきて、喜兵衛の頭や腕や足を外へと引っ張り出した。
こうして、喜兵衛は河童の甲羅を背負わされたというわけだ。河童たちは魚を受け取らぬ客人に、別の方法できゅうりのお礼をした。
河童たちは満足したようだった。しかし、このまま河童の仲間として生きていかなければならないのだろうか?
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