河童の甲羅を背負いし者

にさおかずてる

一 死体を掘り返したこと

 山賊さんぞくどもが喜兵衛を埋めちまった。あいつら、土を固く踏みならしちまったもんだから、俺は掘り返すのに苦労したよ。


 山道の端に連中が捨てていったくわが投げ捨ててあったから、それを拾い上げて、俺はできるだけ手早く穴を掘り返しはじめたのさ。


 ひたいから汗がにじみだした。息をぜえぜえさせながら、土をかき出していった。


 やがて、土ん中から頭のてっぺんが出てきて、顔もちらっと見えた。


 おれはかがんで、両手を使って土を取り除いた。喜兵衛のやつ、かわいそうに目ん玉が飛び出し、舌がだらりと出て、肌全体が暗い紫色になっちまっててよ。すでに息絶えていた。


 そう、手遅れだったんだ。山賊が去ったと見るや、おれはすぐに土を掘りはじめたんだがな、喜兵衛は窒息して死んじまった。


 それに穴から体を出してやることもできねえ。背中につけてる甲羅が重かったからな。


 そう、甲羅だ。


 河童からもらったという本物のやつさ、こいつは喜兵衛をほんのちょっとの間だけ幸せにしたけど、そのあとで、山賊に生き埋めにされるという最悪の事態を招き寄せたのさ。



 話を続けるのに、少し時間を前に戻そう。そうじゃねえと、うまく説明できねえからな。

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