第23話 公爵の恋人(2)
(1-続)
驚きのあまり身を乗り出してしまった。
ボーボーザンバラ、ボサボサ狼公爵の、恋人っっ??!!
「この国の第一王女、イレーヌ・マキシミリアーノ・レイゼルフォン・アルカディオ様です。もう何年も前に、他国の王族に嫁がれましたが」
だっ、第一王女様ですって——!!??
「あ、あ、あの、第一王女様?!アルカディオの輝宝っ、美貌の女神アルジルの再来と謳われる、あのイレーヌ王女様が……、」
——狼公爵の、もと恋人っっっ。
「しょ……衝撃、です……」
片想いではなくて、恋人??
私の身近なカジモドは、その恋を叶えていた!!
公爵とは似たもの同士だと思って、勝手な親近感を積み上げていたのだけれど……一気に崩されてしまいました。
「ディートフリート様は、そ……相当な美貌好きなのですね??」
そして規格外の第一王女様のお好みは、やはり規格外(←狼公爵)だったっ。
「ですから。私たちも頑張りましょう、リリアナ様!」
ユリスはせっせと私の髪を巻いていますが。
もはや——そんな美貌好きを前にして、美貌の「び」の字とも無縁の私のお洒落など、何の意味も持たないような気がしてきました……。
*
「——リリアナか?」
公爵の部屋を訪ねるのは、いつぞやのハーブティー以来。
重そうな両開きの扉の片方を開けた公爵は、湯浴みあとなのかこざっぱりとしていた。
「ディートフリート様……?何だかいつもと、雰囲気が」
ああ……と、顔を上げた公爵が、指先を頬に持って行く。
「伸びすぎたから、少し切ったのだ」
「へ……」
お髭、ほとんど変わっていませんがっっ。
「それ以上は切らないのですか?」
と言ってしまって後悔する、私ったらまた余計な事を!
「……」
案の定、公爵は
「ぁ、いえ!何でもありません。持って参りましたよ……っ。カモミールとバレリアンのお茶です」
私の両手で支えられた銀のトレイを一瞥し、公爵は扉を腕で押さえつけ、私を部屋の中へと導いた。
「そうか……まぁ、入れ」
まだ濡れ髪の公爵から、柔らかな石鹸の香りがする。
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