第6話 初めての食事(3)
*
黒タキシードに蝶ネクタイを決め込んだ侍従が、美味しそうに湯気を立てたお皿を次々と運んでくる。
まともな食事なんて何年ぶりかしら。
亡くなる前にお母様から、テーブルマナーはしっかりと教わっている。
前菜の次は綺麗な朱赤のスープ……赤い色に近いから、素材はビーツだ。
「美味しいぃ!」
思わず出てしまった私の言葉に、狼公爵が顔を上げれば、お髭にスープが……!
こ、これは……っ、素直にお伝えするべきでしょうか??
「口に合ったのなら、良かった」
ダメだ……ビジュアル的におもしろい。笑っちゃいそう——っっっ!!
「あのぅ、、、おひげ、おひげ、にっ」
「髭がどうした?」
「おひげに、す、スープ、が」
はたと気が付いて、おもむろにナフキンで口元を拭く姿。そしてまたひどく照れていらっしゃる。
やっぱり見て見ぬふりをしたほうが、良かったでしょうか?!
人質の立場だといえ、狼公爵はこの白椿城の君主だ。恥ずかしいという気持ちになんか、させてはいけませんよね?
「あのっ、ディートフリート様」
どうにか話を逸らさなければ。
「……ところで私は、いつ牢屋に行けば……?」
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