第4話 初めての食事(1)





——叱られる。

いや、また怒鳴られるかも知れない。


花嫁の、——エレノアのために用意したドレスを人質の私が着て、公爵の前に出て行ったりなんかしたら!


「あのぅ、やっぱり私っっ……公爵様とお食事に同席させていただくのは、違うと思うんです。それに、聞いてらっしゃいませんか?その……人質の事、とか」


「人質?」


私の専属だと言うメイドのユリスさんは、大きな瞳で何度か瞬きをしたあと、小さく首を振った。


「いいえ、私は何もうかがっておりませんが」



——おかしい。何かが、変だ。



先導されるままに部屋に入れば、こじんまりとしたソファとテーブルが置かれていた。どう見ても晩餐の卓という感じではない。


「もしかして、私はここで食事を?」


そうか、人質にはが出るのか! 良かった。


でも待って……まかないを食べるのに、わざわざ? 食事を食べる時は正装だとか、ランカスター公爵家の変わった決まりごととか?


ふと横を見れば、ユリスさんが目をまるくしている。私が一人でごちゃごちゃ呟いているので、答えるタイミングに困ってしまったようだ。


「 ぁ……ごめんなさいっ、私ったら」

「……いえ。晩餐の前座でございます。隣のダイニングルームに旦那様がおみえになるまで、リリアナ様にはこちらで待機していただきます」


なるほど、そう言うことですか。


って! 妙に納得している場合ではない。

やっぱり一緒にご飯を食べるのね。


思い切り叱られる覚悟をしておかなければ、心が持たない。


テーブルの上のグラスを散らしたあの剣幕——。

狼公爵の威圧的な暴言を想像すると、背中が震えた。

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