第4話 初めての食事(1)
*
*
——叱られる。
いや、また怒鳴られるかも知れない。
花嫁の、——エレノアのために用意したドレスを人質の私が着て、公爵の前に出て行ったりなんかしたら!
「あのぅ、やっぱり私っっ……公爵様とお食事に同席させていただくのは、違うと思うんです。それに、聞いてらっしゃいませんか?その……人質の事、とか」
「人質?」
私の専属だと言うメイドのユリスさんは、大きな瞳で何度か瞬きをしたあと、小さく首を振った。
「いいえ、私は何もうかがっておりませんが」
——おかしい。何かが、変だ。
先導されるままに部屋に入れば、こじんまりとしたソファとテーブルが置かれていた。どう見ても晩餐の卓という感じではない。
「もしかして、私はここで食事を?」
そうか、人質にはまかないが出るのか! 良かった。
でも待って……まかないを食べるのに、わざわざこの格好? 食事を食べる時は正装だとか、ランカスター公爵家の変わった決まりごととか?
ふと横を見れば、ユリスさんが目をまるくしている。私が一人でごちゃごちゃ呟いているので、答えるタイミングに困ってしまったようだ。
「 ぁ……ごめんなさいっ、私ったら」
「……いえ。晩餐の前座でございます。隣のダイニングルームに旦那様がおみえになるまで、リリアナ様にはこちらで待機していただきます」
なるほど、そう言うことですか。
って! 妙に納得している場合ではない。
やっぱり一緒にご飯を食べるのね。
思い切り叱られる覚悟をしておかなければ、心が持たない。
テーブルの上のグラスを散らしたあの剣幕——。
狼公爵の威圧的な暴言を想像すると、背中が震えた。
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