#33 セツナの告白②





 新しく煎れた紅茶を持ってセツナさんの部屋に戻ると、セツナさんの顔色は相変わらず優れなかった。


「紅茶煎れなおして来ました。 気分は大丈夫ですか?」


「うん、ごめんね、お茶の用意までさせちゃって」


「もう、遠慮は無しって言ったじゃないですか。小姑として私のことなんてコキ使えばいいんです!」


「うふふ、そう言ってくれるキヨカちゃん、大好きだよ」

 セツナさんはそう言って、顔色が悪いながらも優しい微笑みを私に向けてくれた。



「さて、続きを話そっか」ふぅ~


 セツナさんは深呼吸すると、再び神妙な顔で話し始めた。



「確か事前に、M君が幼馴染の彼女と別れ話するって聞いてた日だったかな、その日の夜にY君に呼び出されたの。 家で勉強しながら(今頃M君は彼女と別れ話してるのかな)とか考えてたら通話の着信があって、家の前に居るから出てきてくれないかって。それで、身近な後輩だし追い返すのも悪いと思って、少しだけならってY君と会ったの。  でも、それが間違いの始まりだったわ・・・・」


「・・・・」


「Y君は会うなり「今日を最後に諦めます。 だから最後の思い出に、キスして欲しい」って。 冗談じゃない、ふざけないでって怒ったんだけど、Y君必死に頭下げるの。 いくら断っても怒っても諦めてくれなくて、その時にふと(自分もM君がまだ彼女と別れてないのにキスとかしてた)こと思い出しちゃってね、1度だけだったら良いか、それで諦めて貰えるならって考えちゃってね、結局Y君とキスした」


「Y君が帰ってくれて自分の部屋に戻ると、M君から生徒会のグループチャットに「彼女と別れました」ってメッセージがあって、それ見たらY君とキスしたことを猛烈に後悔し始めて、M君のメッセージに返事が出来なかった。 次の日の朝もM君と顔会わせ辛くて、待ち合わせ場所に行けなくて」


「当然M君から心配する連絡が入って、先に行って貰う様に返事したんだけど、その時にY君からもスマホにメッセージが入ってることに気が付いてね、メッセージには写真が添付されてて、その写真は私とY君がキスしてる写真だったわ」


「メッセージには「この写真をMに見せる」って書かれてて、最初から脅すつもりだったのね。後で分かったことだけど、友達に協力させて写真撮るのが目的で会いに来たらしいわ。 それで直ぐに、そんなこと止めなさい!って返信したんだけど、結局決着はつかなくて、その日の放課後Y君と話し合うことになったの」


「Y君との話し合いで弱みを見せたらダメだと思って「まだM君と正式な恋人になる前の写真なんて、見せられても困らないわ。好きにすれば」って突き放したんだけど、「いくら正式に付き合う前だと言っても、彼女に浮気されたばかりのMが見て、本当に平気だと思うんですか? 会長にも裏切られたって思うんじゃないですか?」って言われて、反論出来なくなって黙ってたら「別にMと付き合うなとは言いません。僕はセフレでもいいので」って言いだして、結局その日は「考えさせて頂戴」としか返事が出来なかった」


「もうどうすればいいのか分からなくなって、兎に角焦ってた。それでその日の夜にM君に連絡して、次の日が休みで会う約束取り付けて、翌日M君に会いに行ったの。 そこで正式に告白してM君と恋人になれて、そのまま初めてのセックスしたわ。もうこの時は、M君との関係を確実にしようってそればかり考えてた」


「それで思ったのが、M君との関係は絶対に維持しよう。 Y君のことは適当に誤魔化してちょっと相手にするくらいなら何とかなるんじゃないかって」


「結局、Y君にも体を許したわ。 M君と毎日の様に一緒に登下校して、週末もしょっちゅう会ってたけど、たまに放課後とか時間の都合付けて、Y君とも会ってセックスしてた」


「そんなことを続けてたら、ある日Y君から「学校でしよう」って言われた。 その頃にはY君とのセックスに抵抗も薄れてて、むしろM君とのセックスよりも罪悪感とか背徳感とかで興奮が増してるのを自覚しちゃって、よく言うでしょ、”心は彼氏、体はセフレ”、まさにそんな感じになってて、Y君からの「学校でしよう」っていう誘いにも簡単に同意しちゃったの」


「それで、その日は生徒会をお休みにして、生徒会室でY君と会って、直ぐに始めたわ。 お互い無言でキスして興奮してきたらY君はコンドーム付けて、それでY君が私に入って来たのを感じた瞬間、生徒会室の扉が開いて・・・・開いて・・・・・」


 セツナさんは言葉を詰まらせ、両手で顔を覆って嗚咽を漏らし始めた。



「大丈夫ですか?セツナさん? 休憩しましょうか?」


 私が背中を摩りながら声を掛けると、セツナさんは顔から手を離して、目をギュっと瞑って歯を食いしばり、顔を左右に振った。





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