#34 セツナの告白③とキヨカの思い
「扉が開いてそこに立って居たのは、M君ともう一人生徒会1年の女の子のKさんで・・・うぐ、Y君はすぐに逃げ出して、私は腰が抜けたように動けなくて、Kさんは先生を呼びに行くって叫んで、M君と私だけその場に残されて、ひっぐ・・・・それで、M君が、私に、話しかけて、ひっぐ、話かけてくれたんだけど、わたし、ちゃんと、答えられなくて、ひっぐ、泣くしか出来なくて・・・・」
私はセツナさんの話を聞きながら、セツナさんの背中を摩り続けた。
セツナさんは言葉を詰まらせボロボロと泣き続けていたけど、しばらくしてから顔を上げて深呼吸を繰り返すと、流れる涙を拭わずそのまま話を続けた。
「直ぐに先生達がやってきて、私は保健室に連れていかれて、それで両親を呼ばれて、1時間くらいしたら両親がやって来て、教頭先生からその場で退学を言い渡されたわ」
「あとはせーくんから聞いてると思うけど、引きこもって毎日泣いて後悔して、1年くらい誰とも会わないで、でも、事件から1年経ったころに、どうしてもM君に謝りたくなって、衝動的に家を飛び出して、M君の家まで会いに行ったの」
「でも、M君、最初私だって分からなくて。 私引きこもってた間ずっと不摂生してたし、お風呂にも滅多に入らないくらい不健康な生活してたから、凄く太ってて顔中吹き出物だらけで汚い顔してたし、だから私だって判らなくても当然で、でも兎に角謝りたくて、話聞いて欲しくて、道路の真ん中で土下座して頭下げたんだけど、M君に拒絶されて逃げられて、それでも毎日会いに行ってたら警察に通報されて、家に警察から連絡が入って、またお母さんを泣かせて・・・」
「セツナさん、もう大丈夫です。 そこから先は言わなくても」
「・・・うん、そうね。キヨカちゃんは知ってるよね・・・・」
セツナさんは、苦しみながらも全てを話してくれた。
正直に言うと、セツナさんの話はショックだったし、同情出来無いと思った。
いくら脅されてたと言っても、対応を誤り性欲に溺れ最悪の結果を招いたのはセツナさんの責任だ。
でも、なんだろう。
私には、一連の話について言及したり、セツナさんを非難する資格は無いなと思う。 その権利を持つのは、当時の関係者や被害者であって、今の私は完全な部外者。
それと、直接本人から聞かされた話なのに、どうしても今のセツナさんと過去のセツナさんとが結びつかないような、どこか現実味が感じられない様な、そんな気分でもあった。
「セツナさん、全部話してくれてありがとうございます。 少し落ち着いたらセージくん呼んできますね」
「うん・・・キヨカちゃんこそ聞いてくれてありがとうね。 それと・・・私はこんな酷い女だけど、せーくんは違うから。 せーくんはキヨカちゃんのこと絶対に裏切らないから、だから、私を嫌いになっても、せーくんのことは嫌いにならないで」
セツナさんはそう言うと、正座に座り直して「お願いします」と両手をついて私に頭を下げた。
私もセツナさんと向き合う様に正座に座り直して、セツナさんの両手を取って自分の思いを話した。
「セツナさん、私は最初からそんなつもりありませんよ。 どんな話の内容でも、私はセージくんの彼女で、セージくんは私の愛しの彼氏で、セツナさんは私の未来の義姉さんで、お母様は未来の義母さんで、お父様は未来の義父さんで、皆さん、私にとって家族同然で、それを変えるつもりなんて更々なくて・・・・なんて言えばいいのか上手く言葉に出来ませんけど・・・」
「えっと、実の弟のセージくんが全てを知っててもセツナさんをお姉さんとして大切にしてるんだから、私だって全てを聞いてもセツナさんを
「だから、セツナさんの過去を知っても、セツナさんへの態度を変えることはありませんよ」
私の言葉を聞いたセツナさんは、私の手を強く握り返しながら「ありがとうありがとう」と繰り返して、子供のように大声で泣き始めた。
その泣き声が聞こえたのか、セージくんがやってきた。
『大丈夫か!? ねーちゃん、どうした!?』
「セージくん、もう大丈夫だよ。 セツナさんのお話はもう終わったよ。 今、私の気持ちを話したところなの」
『そっか・・・なんて言えばいいのか分からないけど、兎に角、ありがとうな』
「ううん、私は何もしてないよ。 セツナさんが頑張っただけだから」
セージくんはセツナさんの傍に座ると、セツナさんの背中をポンポンと優しく数回叩いた。
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