#12 席替えは突然やってくる



 担任が朝のHRに、なんの予告も無くいきなり席替えをすると言い出した。



 因みに、現在の俺の席は、一番後ろの窓側から2列目だ。

 まぁまぁ良い席だった。


 そして鈴宮は、前の方の中央。

 教卓の正面というハズレ席。


 どうでもいいけど飯塚は、廊下側の前の方。




 席替えの決め方は、担任が黒板に席数分それぞれ番号振ったのを書いて、クジ引いて書いてある番号で決まる。



 面白人間の観察が趣味な俺としては、後ろの方の席のが良いのだけど、でも特にこだわらない方だと思う。

 強いて言えば、ドコでも良いからお喋り出来る程度に仲が良い人が近くの席だと嬉しい。





 で、くじ引きの結果。

 廊下側の一番後ろになった。

 位置的にはアタリと言えるだろう。


 そして鈴宮が、俺の左隣に来た。


 荷物持って移動してきた鈴宮、俺の顔見た途端

「よっしゃぁぁぁ!!!」


 いきなりウルセーな

 急に雄叫びあげるから、クラス中から注目浴びてやがんの。



 そして席に座ると

「セージくんセージくん♪」


『おう、どした鈴宮さん』


「席替えで隣同士なんて、運命感じちゃうね♪」


『いや、特に』


「もう!素直じゃないんだから♪」


『いや、ナニ言ってんだか意味が解んないんだけど』



 そんなご機嫌鈴宮は、よっぽど後ろの席が嬉しかったのか、授業中もずっとニヤニヤしてて、数学とかで先生に「おい鈴宮~、なにニヤニヤしてるんだ~? じゃぁこの問題、鈴宮答えてみろ~」とか言われて指されてやんの。

 

 思わず『ぷっ』って笑いそうになると、ほっぺ膨らませた鈴宮に睨まれた。

 そりゃ教卓前に比べれば天国だし、気持ちが判らないでもないけども。




 最初鈴宮って、控えめで大人しそうにニコニコしてる優等生ってイメージだったけど、今こうして見ると、見せかけだけだったな。 中身は全然控えめでも大人しそうでも優等生でも無い。

 っていうか、俺といる時と他の人たちとで全然態度違うし。


 俺の前だと、なんかあるとすぐ興奮して騒ぎだすし、二言目には持ちネタの勝負下着がどーのこーの言い出すし。


 まぁ、お母さんがあんなんだしな、大人しい訳は無いよな。



 ただ、鈴宮は俺にとっては気軽にお喋り出来る友達でもあるのは間違いないわけで、なんだかんだと今回の席替えはでは希望通りで俺は勝ち組だろう。


 因みに飯塚は、一番前の教卓正面のハズレ席。

 今回一番の負け組と言えよう。 ザマミロ。





『ところで鈴宮さん?』


「はい、なんでしょ!セージくん♪」


『なんでそんなに嬉しそうにニヤニヤしてるの? 今日席替えしてからずっとだよね? いい加減ちょっとブキミに見えてくるんだけど』


「そ、それは・・・セージくんのお隣席になったからに決まってるじゃないですか!」


『え?なんで?』


「なんで?って、セージくんの席は廊下側のもっとも右の列なわけですよ」


『ほう?』


「ってことは、セージくんの隣の席って、左側しか存在しないんですよ?」


『ん? それがなに?』


「その唯一の左隣を私がクジで引き当てたわけですよ?」


『だから?』


「だから?じゃないですよ! 朝から言ってるじゃないですか! 運命を感じてるんです! それで幸せ一杯で体中から幸せオーラが溢れ出て、思わず自然と笑みが零れちゃうんです!」


『いや、笑みが零れるっていうよりも、悪だくみしてる時のニタニタみたいで、キモイんですけど?』


「キ、キモイ!? ほ、ホントはテレ隠しでそんな事言うんですよね? セージくんも運命感じて幸せで胸いっぱいですよね?」


『いや、特には』


「もう良いです・・・・」



 そう言うと、鈴宮は落ち込んでしまい、ちょっと悪いことしたかな?と思ったけど、1分もしないうちにまたニヤニヤしだしたので、もう放置することにした。


 やっぱり鈴宮、変な奴。










  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る