#07 ラブコメ定番の名前呼び





 その後は早速ケーキの調理が始まり、俺も食卓に座って、鈴宮と鈴宮のお母さんとお喋りしながら、調理の様子を眺めて居た。



 そんな会話の中で、飯塚のことを尋ねた。


『あれからどう?何か言ってきたりしてない?』


「うん、スマホにメッセージは毎日の様に来てるけど、全部未読のままにしてる。 直接話しかけられても、目合わせない様にして逃げてるし」


『そうか。なんか危ない目にあいそうなら直ぐに言ってくれれば良いからな』


「うん、ありがとう。 東雲くん居てくれて凄く助かってる」


「そうそう! シノノメくんがキヨカのこと助けてくれたんだってね! もうこの子ったらシノメノくんシノノノメメくんシノメメくんノメノメくんって毎日大変なんだから、うふふ」


「ママ!変な事言わないでよ! 東雲くん、違うからね! 助けて貰ってありがたいって話してるだけだからね!」


『ああ、うん、大丈夫』


「それにしても、シノノメくんって言い難いわよね。 下のお名前はセージくんだったかしら?だったらセージくんって呼びましょ」


『ええ、まぁ、はい・・・』


「もうママ!なに勝手に名前呼びしてるの!? 私だってまだ名前で呼んだことないのに!」


「なら、キヨカもセージくんて呼んだらいいじゃないの。ねえ、セージくん♪」


『ハハハ、そっすね・・・』


 うん、まぁ、鈴宮のお母さん

 中々の強者つわものだったね。


 娘の友達とか彼氏とかでも距離感ぶっ壊してくる感じの人?

 平気で仲良くなっちゃうタイプ。


 あと余談だけど、鈴宮のお母さんも鈴宮以上におっぱいの自己主張が凄かった。



「せ、せせせ、セージくん? 私も名前で呼んで、平気、かな・・・・?」


『ああ、うん、いいよ。シノノメって呼び難いしな』


「う、うん、そうだね。 セージくん♪」


 テレた鈴宮は可愛いんだけど、なんか名前で呼ばれると、くすぐったいというか、寒気がするというか、ぶっちゃけ慣れそうにないな。


 ていうか、鈴宮って気になる男子が居るんだよな。

 俺に甘えてる場合じゃねーだろって思うんだけど。




 その後ケーキが焼きあがると、紅茶を煎れてくれて、鈴宮の部屋に行って二人で食べた。ケーキは普通に上手かった。

 無事に念願の”手作りケーキ”を食べることが出来、ミッションコンプリートしたんだけど、鈴宮のお母さんのインパクトとか、名前呼びの恥ずかしさとかで、すでに手作りケーキへの思い入れとか薄れてしまっていた。


 更に鈴宮の部屋は、鈴宮の香りと紅茶の香りとケーキの甘ったるい香りがブレンドされて中々に刺激的で、そのせいか、それ以来しばらくの間、ケーキとかクッキーとかの甘い洋菓子は、臭い嗅いだだけで胃もたれ起こしそうな気分になることが続いた。



 あと、鈴宮の部屋では、ケーキ食べた後は少し本の話しとかお喋りしただけで、何も甘い出来事は無かった。

 ただ、最後まで「セージくん」って呼ぶ度に頬を赤らめる鈴宮は、学校では見ることの無い可愛らしさがあって、ちょっとだけドキってしちゃった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る