#06 飯塚対策とケーキリベンジ



 何とか元気を取り戻してくれた鈴宮としばらく保健室に残り、今後の事を相談した。



 まずは、飯塚との会話の拒否。

 話しかけられても返事しない。


 周りの友達にもキチンと説明して、もう口も聞きたくないことを理解してもらい、奴が話しかけてきても無視するのを協力して貰う。

 それと、それでもしつこい時なんかは、俺を利用して貰う事。


 すでに保健室に俺が連れてきてる時点で、周りには鈴宮と俺が仲が良いことはバレてるだろう。

 当然、飯塚にも。

 だったらそれをそのまま利用してやろうってことで。

 多分、コミュ障の飯塚は、俺が出てくれば強気な態度は取れないし。



 あと、スマホのブロックをすることも考えたけど、敢えてブロックせずにスルーすることにした。

 奴の行動をある程度は把握出来るようにした方がいいだろうってことで。

 でも返事は返さないし、通話にも出ないように指示した。


 その他では、家族の理解を得る事。

 実際に今日有ったことを話し、もう幼馴染だからって仲良くするつもりがないこと、非常に迷惑してることを親にも分かって貰う。

 何なら親通して相手の親にクレーム入れるのはどうだ?って聞いたら、相手の親も大概らしく、多分効果無いだろうと。




 ぶっちゃけ、ここまでは俺としてはどうでもいい話。


 ここからが大事な話で、手作りケーキのリベンジの相談だ。



 同級生の女子からの手作りケーキのプレゼント


 なんとも神々しい響きだろうか



 こんな事で騒ぐと、ドーテー乙とか言われそうだけど、俺は恋愛経験が無い訳ではない。

 過去に付き合ってた彼女は居たし、女子から告白されたことだって数回ある。


 でも、手作りのケーキとかお菓子は貰ったことがない。

 だって、俺に好意を寄せてくれる女の子って、大概ギャル系なんだよね。

 手作りお菓子とか手料理とか無縁な感じの子ばかり。


 だから、同級生の女の子が作った手作りのお菓子っていうのに、並々ならぬ憧れがある!


 で、だ、折角のリベンジだから、ちゃんと仕切り直しましょうってことで、この週末、鈴宮の家にお呼ばれした。

 作ったその場で食べさせてくれるってさ。


 ぶっちゃけ、鈴宮の家族に顔合わせるのとか、ちょっと気が引けるけど、憧れの手作りケーキの前では些末なこと。


 因みに、念のため言うが、別に鈴宮のことを好きだから嬉しいってことでは無い。

 あくまで同級生の女子ってところがツボ。


 それに俺にとって鈴宮は、恋愛対象と言うよりも、趣味の合う友達。

 手が掛かるけど、見てて面白いクラスの女子っていう感じなんだよな。


 何度も言うけど、鈴宮には飯塚っていう厄介な地雷が付いてくる。

 こんな面倒なのはゴメンだ。








 そして土曜日。

 鈴宮邸へやって来た。


 来たことは何度もある。

 図書当番の日に、帰りに家まで送ったことが何度かあるし。


 しかし、入るのは初めてだった。


 ピンコーンとインターホンを鳴らすと、鈴宮が応答してくれた。


 玄関開けて出迎えてくれた鈴宮は、「お前今から出かけるの?」っていうくらいバッチリお洒落していた。


 なので一応礼儀として『私服初めて見たけど、鈴宮さんってお洒落なんだね? 落ち着いた雰囲気の鈴宮さんによく似合ってるよ』とホメておいた。


 俺の言葉を聞いた鈴宮は、顔真っ赤にして「そ、そうかな、えへへへへ」と嬉しそうだったので、第一フェーズは上手く行ったと見て間違いないだろう。



 家には鈴宮のお母さんが居て、お父さんは不在だった。

 中学生の妹が居るらしいけど、妹も部活で不在らしい。


 鈴宮のお母さんにも挨拶して、手土産に持参した大福と梨を渡した。

 大福と梨は、行きがけに近所のスーパーで買って来た。


 知らずに買って来たんだけど、鈴宮はアンコが大好きらしくて、大福に感激していた。

 変な奴、と思ったけど、鈴宮らしいとも思った。


 手土産作戦も上手く行き、第二フェーズも無事成功。




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