#04 恋に落ちるまで
そんな高校2年のスタートだったけど、良いこともあった。
週に1度の図書当番の日。
今、この時間は私にとって、唯一と言ってもいいほどの高校での楽しみになっている。
それは、同じ図書委員の
最初は、ペアになる図書委員が話しやすそうな人で良かった、と思う程度だった。
でも実際に話してみると、私と同じ読書が趣味だって言うし、軽そうに見えて実は私のこと気遣ってくれてるのが分かるし、誰かさんとは大違い。
オススメ本を交換しても、私の貸した本を直ぐに読んでくれて、その感想も私と同じポイントで感動したり笑ったりしてくれてて、逆に借りた本も私の好みに合ってて凄く共感出来た。
こんなに趣味が合う人って実際居るんだ!と嬉しくて嬉しくて、毎週水曜日の図書当番が楽しみになっていた。
そんな東雲くんに、ある日マサくんとの事を聞かれた。
『鈴宮さんって、飯塚と幼馴染なんでしょ? ぶっちゃけ面倒そうだね』
びっくりした。
マサくんとのことを冷やかしたりせずに、私の本音を言い当てられた。
こんなこと、小中高と今まで一度も無かった。初めてのことだ。
「ど、どうして面倒そうだと思ったの?」
『え? だって鈴宮さん、飯塚のこと好きじゃないでしょ? あれ?違ってた? ならごめん。てっき「違わないよ!」
思わず喰い気味に肯定しちゃった。
『・・・やっぱりそうなんだ。なんかさ、鈴宮さん、教室じゃ飯塚と目も合わせようとしないし、申し訳ないけど今の飯塚見てる限り、とても彼氏にするような男には見えないんだよね。なんか自分勝手で勘違い拗らせた俺様系? でもコミュ障で他人とは壁作って鈴宮さんにだけエラソーにしてるっていう。 あ、ごめん、言い過ぎたかも。鈴宮さんにとっては幼馴染だもんね』
凄い・・・
東雲くん、よく見てる。
私の思ってたこと、全部言い当ててる。
「東雲くん・・・言い過ぎじゃないよ・・・全部その通りだよ・・・彼のこと、本当に好きでも何でも無いんだよ! 東雲くんなら分かってくれるよね!?」
『え?ああ、そうだね・・・ずっとそう思って見てた。 飯塚の奴、彼氏ヅラしてるけど鈴宮さんに全然相手にされてなくて、でも全然へこたれてなくて、メンタル強えーな!って』
「そうなの! 私が必死に拒否しても全然へこたれてくれないの! 私がテレてるって勝手に都合よく勘違いするだけなの!」
『うわぁ・・・メンタル強いっていうよりも、自己都合脳内変換が凄いんだ。やべーな飯塚』
「近所に住んでるし親同士も仲良いから、子供の頃よく一緒に遊んでて、でも私は他にも友達居たし、彼の事を特別に見ることは無かったんです。でも彼には他に友達居なくて、いつも私にべったりで、それは中学に入ってからもで・・・」
「それでも高校に進めば別々になって解放されるって思ってたのに、あの人、志望校のランク下げてまで私と一緒の高校に付いて来たんです」
『え?それは流石に嘘でしょ? ええ?マジで? 勝手に一方的に志望校変えてまで???』
「うん・・・私も全然知らなくて、合格発表の時に聞かされたの。 私と一緒の高校行く為に志望校のランク下げたって」
『必死だな飯塚・・・あの性格が無ければ一途な恋心で美談なんだろうけど、あの勘違い俺様系を見ちゃってるから、只々キモイ・・・・』
「そうなの!キモイの! あの人キモイの! 人前でもキモイくらいなのに、二人っきりになるともっとキモイの!」
私は自分の不満やうっぷんを全て吐き出すかの様に、東雲くんに打ち明けた。
東雲くんは、ヒキながらも私の話を全部聞いてくれた。
図書当番の時間に何話してるんだって話しなんだけど、東雲くんは私の理解者だ!って思った私は、どうせ滅多に人が来ない図書室の仕事そっちのけで、興奮しっぱなしで話し続けた。
この日、東雲くんは私に気を遣ってくれて、帰り家まで送ってくれた。
その帰り道も私は愚痴り続け、東雲くんは私の愚痴を聞き続けてくれた。
更に私の家の前に着いても、東雲くんは私の相談に1時間近く付き合ってくれて、アドバイスとかくれた。
そんな東雲くんからは
『部外者だけど言わせてもらうと、鈴宮さんが嫌がってる風でも本気で拒絶しないから、照れてるだけで受け入れて貰ってると思い込んでるんじゃないの? あと、俺が思うに、彼なりのマーキングでしょ?。 この子は俺のもんだぞっていう周りへのアピール』
「そうなのかな・・・」
『でもまあ、いっそのこと飯塚と付き合っちゃうっていうのも選択肢の一つだよ? 俺はオススメしないけど。彼はダメな男の部類だしね。 陰キャとかぼっちとかそういうこと以前に、鈴宮さんに対して女性としての敬意が無い。”可愛い異性の幼馴染”っていうステータスやレアアイテム扱い程度にしか見てないね』
「思い当たることが多いです・・・でも、どうしても一人ぼっちの彼を私が本気で拒絶したら、今度こそ本当に一人ぼっちになると思うと、少し可哀そうで・・・」
『正に、その甘さに付け込まれてるじゃん。本当に嫌な時や嫌いになった時って、俺だったら「嫌です、嫌いです」っていう会話すらしたくないかな。 完全に無視。存在すら認めない。視界に絶対に入って欲しくない。 それって俺なりの「あなたの事嫌いです」っていうアピールなんだよね。 言葉じゃなくて態度でアピール』
「なるほど・・・同情や憐みに付け込まれて、私の曖昧な態度があの人を勘違いさせてる・・・分かるような気がします」
『まぁ、一番手っ取り早いのは、他に彼氏作っちゃうことだろうね。 そうすれば流石に諦めるでしょ。 逆恨みとかしそうだけど』
「他に彼氏・・・・」
『鈴宮さんは、好きな男子とか居ないの?』
「好きな男子は・・・分かりません・・・でも気になる人なら・・・(チラっ)」
『へぇ~、じゃあその人と付き合っちゃえば? 俺で良ければ協力するよ?』
「うう・・・考えてみます・・・」
『了解♪ まぁ、慌てずにゆっくり考えると良いよ。 じゃぁ俺帰るね』
「うん、ありがとうね。気を付けて帰ってね」
『あいよ~ またね~』
そう言って、東雲くんは手を振りながら帰って行った。
マサくんとの悩みを理解してくれる人が現れたっていう興奮に、それが今もっとも気になる男子である東雲くんだっていうスペシャルな事実に、この日私は一人になってもずっと興奮しっぱなしで、夜遅くまで寝れなかった。
というか、東雲くんのこと、好きになった。惚れた。こんな気持ち初めて。
こんなにも私のこと理解してくれる人、友達はもちろん家族にも居ない。
趣味は合うし、私の悩みも言わなくても感じとってくれて、愚痴沢山言っても全部聞いてくれて、ちゃんとアドバイスまでしてくれて。
こんなに頼りになる素敵な人、今まで出会ったこと無いし、好きになって当然だよね!
こうして私の初恋が始まった。
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