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□奈津乃
とにかく私は、慈光沢美に疑いを向ける。
由麻から、慈光と仲の良い人間を教えてもらって、私はそれを丁寧にスマートフォンでメモをした。そこに並べられた名前を、日常で何度かは耳にしているはずだが、興味のなかった私はその中の一人すら聞き覚えがなかった。我ながら都合の良い耳だと思った。
慈光は何処を探してもいなかったけれど、その友人たちは広場の別棟よりのところで、雲霞のように集まっていた。
こういう非常事態だと、他人に話しかけるのに何の躊躇いもなかった。私の原動力は、こういう怒りなどの負の感情なのかも知れないと、その時に感じた。
私が、ねえ、と声を掛けると、この十人ほどの一団の反応は、綺麗にふたつに分かれた。私の顔を見て、謎を解いてくれる人だと思っている、つまりは私に協力的な人間と、目立っている私のことが嫌いな、非協力な人間だった。
「慈光沢美って、何処にいるか知らない?」
私が訊いた。協力的な一人の女が「奈津乃探偵、捜査?」と茶化してくる。実際こいつらも、協力的というわけではなく、物珍しいと思っているだけなのだろうか。
そして、非協力な女が口を挟んでくる。目つきも悪ければ、性格も悪そうだった。
「お前さ、沢美のこと疑ってんの?」
ずいと身を乗り出す非協力女は、私を指差して、睨みながらそう尋ねてきた。
「疑ってるっていうか……調査よ」私は眉をひそめた。「いきなりお前って失礼ね」
「沢美まで疑うって、正気じゃないでしょ」非協力女が腕を組んで、呆れ返った。協力的な女の方は、割って入ることもなく、黙って楽しそうに私達を眺めていた。「お前、この間も長浜さんと堀切さんのこと疑ってたでしょ。部員を疑うって、どうなの? 普通に信じられないんだけど」
「どうって……」私の中で徐々に怒りが蓄積されている感覚があった。「可能性があるんだから、しょうがないでしょ。他にいないもの」
「お前は自分の立場をわかってないよ」女は怯まないで、続けた。「ただでさえお前は、謎解きなら網城に任せろみたいに扱われてるから、お前の言うことを疑う人間なんてのは少数だって知れよ。お前に疑われるってことは、そういう色眼鏡で見られるんだよ」
「知らないわよ。じゃあ探すなってこと?」
「そうだよ」女はふんぞり返る。「疑うだけ疑って、その後のカバーなんてなにもないじゃない。長浜さんと堀切さんなんて、あの日以来、後輩に舐められてるんだよ。それってお前の所為だって知ってる? お前がちゃんと、『やっぱり二人じゃありませんでした』って言わないと駄目なんじゃないの? 疑うだけ疑って、違ったら後はどうでも良いって、ふざけてるわよ」
「はあ? あの時はこっちだってギターの弦とか切られたんだから、しょうがないでしょ」
クスクスと、
協力的だった女が、面白そうに笑う。
何を笑っている。
私を、馬鹿にしているのか。
「沢美のことなら、何処に行ったか知らないし」非協力女が、私を手で追い払うジェスチャーをした。「お前に説明することはなにもないな。消えてよ」
「何よその態度」私は舌打ちを漏らした。「由麻に言いつけるわよ。あんた、由麻が四年生全員追い出したの、知らないの?」
「うるさいな、勝手に言えよ。部長と仲良いからって、調子に乗ってるの?」
「船元先生にも言う」
「だから、勝手に言えって。どうでも良いから。お前のその態度こそ、部員のみんなに教えてやるわ。あいつは、仲間を疑う最低のクズですって」
「もういいわよ」
突き返された私は、地面を蹴った。それでも不満が胸中から消えなかった。
とぼとぼと歩いていると、さっきのあの女の言葉が、私の中で引っかかる。
――お前に疑われるってことは、色眼鏡で見られる。
――お前の態度こそ、部員のみんなに教えてやる。
せっかく受け入れられていると感じていたのに、私はまた、一人になってしまうのだろうか。
……構うことはない。
あいつらなんて、部員のやつらなんて、友人でもなんでも無い。元より、私は話す価値すら無いと思っていた。嫌われようが、どうだっていい。勝手に向こうから距離を取ってくれるなら、ありがたいという捉え方だって出来た。
私には、せれな先生がいる。彼女の隣こそが、私の居場所だった。
だから、お前たちなんかとは違うんだ。
何百回も、繰り返して唱えたその呪文のような一文を、私はまた胸で大切に愛撫した。
■犯人
広場に戻って、様子を見ていた。あの目立つ割に地味で変な女が、何処かから私を見ているような錯覚が、ずっと胸のあたりにあるような気がした。
広場は変わり映えがしない。銀川せれなも、船元美空も何もやっていることは変わっていない。ふたりとも、落ち着きがなくふらふらと歩き回っている。事情聴取が進んでいるのかどうかも、様子を見るだけではわからなかった。
私は別棟を眺めた。そこに、あの女が向かったのだろうかと思い馳せた。現場には、警察官の一人も立っていなかったはずだ。あの女といえども、簡単に中に入ることは出来る。そしてロッカーを開けられたら、あまり良くない状況に転ぶだろう。そこには掃除機が押し込められていて、私が家から持ってきていた物だった。
何かで私のものだと照合されると、そこで私は終わる。
私は、ため息を吐いた。残暑が漂う虚空に、溶けていった。
別棟に出入りする、運動部を眺めた。こんな時間からサークル活動だなんて、舐めているとしか言いようがなかった。授業はどうしたのだろうか。それとも、暇な四年生なのかもしれない。運動部の部室に出入りなんてしたことはないけれど、それらがジャズ研究部や軽音楽部と同じように、別棟に備わっていることは知っていた。
そうしていると、後ろから声をかけられる。
「あんた、大人しく待ってるようね」
と、さっきの、私を疑う地味な女が、声を掛けてきた。振り返る前に声でわかったので、私はわざと視線を別棟に向けたまま返事をした。
現場に行かないの? と私は訊いた。
「運動部の奴らがうろうろしてて、嫌なのよ」それはそうか、という理由だった。「私が現場に近づいたのがバレたら、それこそ濡れ衣を着せられるわ。ふざけんなっての」
そういえば、
と私は、ようやく振り返って、女を見た。あたりまえだが、さっきと同じ顔がそこにあった。
あんたが私を疑う根拠って、なに?
「はあ? さっき言ったでしょ」と心底バカを見るような顔をして、彼女が答えた。「小麦粉をスーパーで買ってたからだって。それを見たの」
それだけ?
「……そうよ。でもスーパーの場所まで言えるわ」女が何処から捻出するのかわからないような自信を見せて、胸を張った。「隣町の、○○ってスーパーよ。O駅にもスーパーマーケットがあるのに、わざわざそんな所で小麦粉だけを買うなんて、異常よ。あんたが犯人である、決定的な証拠でしょ」
行ってない。それだけ私は答えた。本当か嘘かは、特に意識しなかった。
それだけの証拠で疑われるなら、犯人なんて星の数ほどもいるだろう。
だいたい、隣町に行く必要なんかないだろう、と私は付け加えた。私がいつも行っているのは、O駅の方だと。それは嘘だったけれど、言い逃れようと思った。
「でも、あれはあんただったわ」女は食い下がった。「同級生の顔なんて、見間違えるもんですか。珍しい所で買い物をしてるから、おかしいと思ったのよ」
なんでお前もそのスーパーにいるのか。
「そこが私の家だからよ。もう言い逃れできないでしょ。早く白状しなさい」
いや、だったら証拠を出せって、さっきから言っているだろう。
そう突きつけてやると、女は怒った。
「……だから、これからそれを探しに行くって行ってんのよ。あんた、何度も言うようだけど、ここを動いちゃ駄目よ」女が指を向ける。「警察に行ってやるから」
言い残して、女は消えた。
やれやれという言葉を、初めて口から発音しそうになった。
さっきの女が、今度は人を連れて私のもとに戻ってきた。その様子を見るに、現場へは行っていないようだったので、私はそれだけでも安心した。連れてきた人間たちには、何の興味もなかった。彼女の、バンドメンバーかなにかだろう。
地味女が、メンバーを私に紹介した。そんなことは、ライブでだけやっていてくれと、私は座りながらそう思った。
「この子は、O駅に住んでいるの。あんた、O駅のスーパーで買い物してるって、さっき言ったわよね?」
地味女に肩を叩かれたメンバー女は、不安そうに私を見た。その表情が何を訴えているのかは知らない。
彼女の質問に頷くと、地味女は鬼の首を取ったかのように笑った。
「いつも行ってるって、言ったわよね? あはは。じゃあ今月の特売品ぐらい言えるわよね。答えなさいよ。この子は、その答えを知ってるから、嘘をついたら、すぐにわかるわ」
私は、汗をかく。
うかつだった。本当は、スーパーになんてロクに通っていないのに、軽率にあのスーパーが行きつけだなんて、答えるもんじゃなかった。これからの人生の教訓にするべき学びだとは思ったが、ひょっとすると私の人生はここで終わるのかも知れなかった。
「どうしたの、答えられない?」
地味女は笑う。メンバー女は困っていた。玩具にされている、という自覚すらあるのだろう。彼女のバンドの、人間関係を察して変に同情を覚えた。
特売品なんて、いつも顔を見せていないと、わかるもんでもない。
かと言って当てずっぽうで当たるものではなかった。どうにか、答えないで済む上手い返答を、捻出しなければならないが、頭の中には、今何もなかった。
遠くで、銀川せれなが足を組んでいるのが見える。大事な場面で関係のないことを考えるのは、私の悪いところだった。追い詰められると、途端に弱い人間になってしまう。
それも、こんな訳のわからない女に。
しまったな。こんなことなら、スーパーにでも通っておくべきだった。私の家からなら、さほど遠くはない。学校帰りなら、バスに乗って行けばすぐだった。
と、
そこで私は思い出した。
息を深く吸った。
――聞いている。
私は、スーパーの特売品を。今朝のバスの中で。
人が会話をしているのを、どうでも良さげに聞いていた。
「早く答えなさいよ。知らないわね、あなた」
待て、と彼女を止めた。地味女は、不機嫌そうに黙った。
確か、今月の特売品は三つほど。
炭酸水、
そして食べ物……冷凍たこ焼き。
さらに、ヨーグルト。
どうにか思い出して、それだけを口にした。地味女の反応を見るのが怖くて、ずっと下を向いていた。このうなじに、ギロチンが降ろされるような錯覚を、何度も繰り返した。
メンバー女は、地味女に告げた。
「正解だよ。この人、ちゃんとO駅のスーパーに行ってる」メンバー女は、私を疑うでも、地味女に加担するでもなく、素直にそう答えた。「隣町に行く理由は……薄くなったんじゃないかな」
「…………ふん」面白くなさそうに、地味女が答えた。「いつもそっちに行ってるからって、昨日隣町に行っていないという証拠にはならないわよ」
それはそうだと思ったが、だったら証拠を出せって何十回も言っているのに、この女が確証を持ってきたことはない。
無いな。
顔を上げて、私は心で頷く。
私を追い詰めるような証拠なんて、あの現場に置いてきた掃除機くらいで、他にはなにもない。
地味女はまた、メンバー女を連れて消えた。納得をしたわけではないらしいが、意外なほど本気で折れてしまったのかも知れない。馬鹿な女だ、と私は思う。
こうなったら、さっさと処理したほうが良い。あの掃除機を、あのバカ女が見つけてしまう前に。
広場を抜け出した。誰かに見られているだとか、そんなことはもうどうでも良かった。トイレにでも行ったと答えればいい。大した事件ではないし、そこまで咎められはしない。
事件現場となった教室に向かう。結構な距離があるが、息を切らせている余裕すらない。私は黙々と、階段を登る。一段一段に、あの地味女の顔を思い浮かべて、踏み潰していった。
現場には、本当に警察官の一人も立っていなかった。警官自体が彼しか来ておらず、発見されてから間もない上に、昼間は人気の少ない別棟だった。それでいいと、あの適当な警察官も判断したのだろう。私はそれに対して感謝をする。
小麦粉は、私が撒いた時のままだった。何も変化はない。私を惑わすようなことなんて、一つも起きていなかった。足跡も付いていないことから、地味女がここへ来て、後ろのロッカーを物色したわけではないという確認もできた。
私は、小麦粉に対して、何の躊躇いもなく靴を乗せた。そのままロッカーへ向かった。私の歩いた痕が、私を追い詰めるように残っていった。白くて、丸い。学生が作る独りよがりな芸術作品みたいな足跡が描かれていった。
ロッカーの中には、今朝確かめた時と全く同じ格好で、掃除機が仕舞ってあった。それを使って、コンセントにプラグを差して、さっさとこの真っ白い粉を掃除してしまっても良かったのだけれど、どこかで私を、あの女が見張っているような錯覚が、襟足の方から消えなかった。
何より、こんな静かなところで、それなりの騒音のする掃除機を使いたくなかった。怖じ気づいてしまった、と言う方が正しい。
私は掃除機を掴んだ。小型の、持ち運びが容易なタイプだった。小麦粉を吸う分には、この程度でも十分だと思った。それほど腕力もいらない。買ってから、まだそれほど時間は経っていないけれど、値段も安かったし、思い入れもない。
窓に近寄る。開ける。目下には、学校の敷地、校舎裏とそこに面しているフェンス。その向こうには森が広がっていた。フェンスは乗り越えられるほど低くもなく、森は長い間誰も入っていないことを証明するように、深く草木が生い茂っていた。
腕を持ち上げて、狙いを定めて、私は掃除機をフェンスの向こう側に投げた。
ボールを投げたときよりも、綺麗な弧を描いて、掃除機が森の中に吸い込まれて消えていった。
一息をつく。
よし、これで安心だ。もうあの女に、掃除機を発見されて、その持ち主を追求されて、私を疑うなんて可能性は、掃除機と一緒に潰えた。掃除機は最悪もう使い物にならないかも知れないが、どうだっていい。ほとぼりが冷めた頃に、ゆっくりと回収しよう。頑張れば、あのフェンスくらい私は登ることだって出来る。
さて、残る問題はひとつ。この部屋をどう掃除するのかということだけだった。
そのままにしておくという選択肢はない。綺麗に掃除してしまったほうが、私の心配事が無くなる。その平穏が、喉から手が出るほど欲しい。銀川せれなの授業を中止にするだけが目的だったのだから。
それにあの警察官だ。この事件を、大したものとして扱っている様子は、まるで見受けられなかった。
事件の現場そのものの具体的な被害が消えてなくなれば、あの男は、愚にもつかない悪戯だと判断して、捜査を打ち切ってさっさと立ち去ってくれるだろう。
そう信じていた。
□奈津乃
慈光沢美は、食堂の裏手にいた。
あの女、こんな所で何をやっているのか。彼女の考えなんて、さほど話したことのない私にとって、理解できるものではなかった。
慈光は裏手で、友人たちと談笑していた。時々、食堂の方を伺っている。腹でも減っているのだろうか。そういえば、もう昼食時に差し掛かろうとしているが、事情聴取の終わりの時間を、船元やあの警官から聞かされてはいなかった。
私は物陰に隠れて、慈光を観察した。直接口を利いてやっても良かった。せれな先生を嫌っているかどうかをはっきりさせる、という大義名分が私にはあった。
とにかく無意味に声がでかくて、とにかく目立ちたいという意識を、外から見ていても感じるのが特徴だった。それは彼女のピアノ演奏にも現れているようだった。椅子から立ち上がって、奇行とも言える方法で鍵盤を押さえている姿を、私でさえ覚えていた。曲の方は、あまりきちんと聞いたことはなかったのだけれど。
だけど、それだけの人物だった。変なことをやるから印象に残っているだけで、実際目にしている彼女の姿はどう見ても地味だった。結局の所、彼女の行いは凡人の範疇に収まっているにすぎなかった。
今も、大したことのない話を、大きな声で言うだけの女がそこにいる。
「あいつが怪しいのにさ、証拠がわかんないのよね」と慈光は言った。探偵の真似事をしているに過ぎない。「どうやって集めればいいのさ」
メンバーの女はそれを聞いて頷いているだけだった。いつも、そんな雑談に無理矢理つきあわされているのだろうと思うと、同情を覚えないでもなかったが、彼女のことだって、私はあまり好きではなかった。
「足で探すとか……」メンバーの女が、無理やり自分の意見を口にした。「となれば聞き込みとかしかないんじゃないかな」
「何を訊くのがいいのかしら。犯人が誰か知ってるって訊けばいいの? そんな単純な話じゃないわよね。もっと……一見関係ない情報から推理しなくちゃ」
「そんな都合よく地味な情報が落ちてるかな……警察の人だって、それなら推理できるんじゃない?」
「ああー、もう! 駄目ね!」慈光は諦めたように首を振った。「あいつ、どうやって推理なんかやってるのかしら……昔から不思議だったのよね」
私は陰口を言われているような気分になる。
慈光のくせに、私になんて言う態度を取るんだ。
「銀川せれなは今、何してるの?」慈光がメンバーの女に尋ねた。「帰ってくれたらそれが一番いいけど」
「ずっと広場にいるよ」女が即答した。ずっと、見ていたのかも知れない。「だいたい一人だけど、網城とか、櫛淵とかと一緒にいたり……たまにうろうろしてる。事情聴取は終わったはずなのに」
「まあ帰るわけ無いか……」慈光は呟いた。「これからどうしようかな……」
慈光は鞄から、何かを取り出した。目を凝らす。それは、パンだった。ついに堪えきれなくなったらしい。それを見ていた私も、ずっと空腹を覚えているのを思い出した。こういう品のないところが、この女の嫌いなところだった。
けれど、どこかで知ったことのあるパンを、慈光は片手に持っている。
どこで見たのか、聞いたのか……。
あの、袋についているマークを、何故か私は知っている。
「沢美、それ、あそこのパン?」とメンバーの女が尋ねた。「買えたんだ?」
「そうよ、苦労したわ」パンをひらひらさせる慈光。どんな種類のパンなのかは、ここからではよくわからなかった。「最近これが食べたくて、ずっと朝から並んで、ようやく買えたのよね」
そう口にする慈光を見ていた私は、顎が外れそうになった。
そうか。あのパン……。朝から並んでいなければ買えないほどの、人気店のパンだ。紗良が、一度話していたのを聞いたことがあって、それ以来、電車やバスの中でそれを持っている人間を、私はひもじい思いで見つめたことさえあった。
時間が少し経って興味も薄れていたけれど、間違いなくあのパンが慈光の手元にあった。
じゃあ、
慈光に小麦粉を撒くなんて、出来るわけがないじゃないか。
あいつが犯人の可能性なんて、まったくない。
だったら、あいつ以外の誰かを探さないといけない。
誰か。
あいつ以外に誰かを……。
視線を、感じる。
私は、そっと振り返る。
先生に、慈光が怪しいという情報を流してきた女が、私の方を見ていた。
その顔は、
笑っているのか。
探偵ごっこに興じる私を、お前ごときが笑っていいのか。
私は、慌ててその場を去る。
羞恥心に、足をすくわれないうちに。
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