第3話 運命の糸

第3話


詩織side


害虫が死んだ後、私達はお母さんの実家へと引っ越す事になった。


「うぅ…」


お母さんはかなり落ち込んでいた。


死んだ後に、あの害虫が浮気していた事が発覚したのだ。


今のお母さんは悲しみ、怒り、疑念、様々な感情が入り混じって、押し潰されそうになっている。


あんな害虫にそんな目に合わされるのは我慢ならない。


「お姉ちゃん、お母さんを頼むね。」

「うん!任せて!」


私には見えないが、姉が見えないナニカを動かす動作をする。


すると、その日からお母さんは日に日に良くなっていき…


「あんな人、どうでも良いわ。貴方達が無事だったらね♪これからは3人で頑張っていきましょう!」


と、言ってくれた。


勿論、心の傷が癒えた訳じゃない。


私がお姉ちゃんにして貰ったのは…


…お母さんの糸が向かうベクトルを此方にだけなのだから。


そうすれば、今ままであの害虫に向かっていた感情が私達に分散する。


悲しみや怒りの糸は切って貰った。


それでも消えるのには時間が掛かる。


心とは本当に面倒なのだ。


まぁ、お母さんがこれであの害虫から解放されるのなら良いや。


「お姉ちゃん、お母さん、ずっと一緒だよ?」


これからもずっと、ずっと、ね?


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この後は、平和に過ごせていた。


私達は普通を装い(お姉ちゃんは若干天然が混じってる気もするが)、お母さんを支えながら生きていた。


私達も大学生となり、より面倒な日々が待っていた。


「ねぇ、君達?少し飲みに行かない?」

(うぉ、双子か!お持ち帰りとか出来ないかな?)


サークルに所属したらしたで変に誘われる様になった。


下心満載で吐き気がする。


どっちが私で、どっちがお姉ちゃんか見分けられない癖に…


そんなある日…


「詩織ちゃん!詩織ちゃん!凄い人が居た!」

「いきなりどうしたの、お姉ちゃん…」


何故か、興奮した様子の姉が飛び込んでくる。


何か合ったのか?


凄い人って、いったいどんな人が…


「物凄い糸があったの太くて長い、運命の赤い糸が!しかも、私と詩織ちゃんの両方に!」


なっ、それは!?


「今すぐ私にも会わせて!」

「うん!」


私の姉はこれでも警戒心は強い。


それでも、こう言うと事は運命レベルで相性、糸が良いという事なのだろう。


そのレベルな糸が私にも付いているらしいのだ。


興味が湧くに決まってる。


「あっ、お姉ちゃん!あの人だよ!」


姉が指を指す場所を見た瞬間、私は固まってしまった。


「ああ…」


欲しい。


初対面な筈なのに、そう思ってしまった。


つまり、私は…


…大学生にもなって、一目惚れをしてしまったらしい。


続く

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