第6話 影が迫る

第6話


部屋に閉じ籠もってから、数分経った。


最初は平気だった。


まぁ、ドンドンと叩く音が煩い位だった。


だが…


「何か寒くないか?」

「恐らく、あの悪霊の力の影響ね。少しの間の我慢よ。」

「そうか…」


じわり、ジワリと、寒気がこの場を支配していく様に感じる。


ゆっくり、ゆっくりと真綿で首を絞めるかの様に…


少しずつ、少しずつ、近づいていく。


そう思っていると…


シュッ…


「火が消えた!?」

「そう来る訳ね…大丈夫よ、少し暗くなっただけだわ。」


と、彼女が少し驚いた俺の手を握ってくれる。


手は冷たかったが、安心した。


だが、その安心すら吹き飛ばすかの様に…


『リュー君…』

「くっ!?」

『リュー君リュー君リュー君リュー君リュー君リュー君リュー君リュー君リュー君リュー君リュー君リュー君リュー君リュー君リュー君リュー君リュー君リュー君リュー君リュー君リュー君リュー君リュー君リュー君リュー君リュー君リュー君リュー君!』


奴の咆哮と共に、俺の身体が動かなくなる。


これは、金縛り!?


「くそっ、動け!動けよ!落ち着いて!私が居るわ!」


彼女は身を以て、俺を止めてくれる。


冷たいが、何と柔らかい身体なのだろうか?


思わず、安心してしまう。


だが、悪霊は遠慮なく襲い来る。


シュッ!シュッ!シュッ!シュッ!


次々と灯りが消えていく。


それと同時に、闇が世界を支配していく。


闇がジワ、ジワ、ジワリと迫り、俺を包み込む。


完全な闇、見渡す先は何も見えず、絶えず不安だけを煽っていく。


そして、俺は気が付いてしまった。


「おい、何処だ!アイツは何処に!」


気が付けば、俺の近くに居た彼女が居なくなっていた。


「そ、そんな…」


俺は独りになっていた。


そして、何も見えない状況で…


カサッ…


「ひっ!」


少しの音だけでも、恐怖を覚えてしまう。


しかも、追い討ちを掛けるかの様に…


『リュー君、此方だよ♪』


声が聞こえる。


何処か懐かしい感じの声。


でも、俺は更に恐怖した…


この声は…


「あの悪霊の声だ…」


今まで以上に、明確な意思を感じる声だった。


『リュー君、ほら此方へ来よう?』


嫌だ。


『ほら、そっちは危ないよ?』


危ないのはお前だ。


『独りボッチは寂しいよ?』


違う!俺は、俺は…


あれ?今の俺って…


『私が居る限り、リュー君を独りにしないよ?』


独りにしない…


…本当に?


『うん、そうだよ。だから、此方へおいで♪』

「うん…」


独りじゃなくなる。


この暗闇の中、一緒に過ごせる。


例え、悪魔の囁きだとしても、俺は…


「聞いちゃだめ!」

「えっ、お前!?」


いきなり、彼女が現れる。


一体、何処に…


「やっと、正気に戻ってくれた!あのまま、あの悪霊の戯言を聞いてたら、酷い事になってたわよ!」


そうか、俺は悪霊に拐かされて…


「大丈夫だよ、私が居る限り…君を独りにしないからね。」

「ありがとう、本当にありがとう…」

「どういたしまして、♪』


えっ、どうしてその呼び方を…


『リュー君〜捕まえた♪』


続く

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